はり・灸・小児はり 中宮院 OFFCIAL OWND

西日本豪雨災害支援鍼灸経絡治療ボランティアのご報告

2018.07.17 01:49

この度の西日本豪雨災害で被災されたみなさまにお見舞い申し上げます。

被災地の一日も早い復旧をお祈り申し上げます。

お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。

ご遺族のみなさまにお悔やみ申し上げます。

捜索中の方々の安否が一刻も早くご確認されるようお祈り申し上げます。


我々に何ができるかを考え、実行したことを時系列を追って報告させていただきます。

メディアの情報で、避難所に身を寄せている子供たちにアトピーの悪化や汗疹やとびひなどの医療ニーズがあることを知りました。


7/12(木)

岡山県倉敷市保健所災害対策本部に連絡を入れさせていただき、本会(一社)東洋はり医学会関西(現日本はり医学会)にはアトピー性皮膚炎およびその他皮膚疾患に対するエビデンスがあることを申し伝えました。


7/13(金)

災害対策本部の奥野さんから、15日日曜日か16日月曜日に来てくださいとのご連絡をいただきました。

15日は例会があるので16日に向かうことになりました。


7/14(土)

経絡治療の同志である、(公社)岡山県鍼灸師会の伊ケ崎克己先生に連絡を取らせていただき、現場の情報提供をお願いしました。

伊ケ崎先生はすでに、(一社)岡山県鍼灸マッサージ師会との合同チームで避難所を巡回され被災者および市町村職員、ボランティアの方々のケアに当たっておられました。

伊ケ崎先生から、倉敷市内は交通網に影響なく、お店も通常通り営業しているとお聞きし、安心して向かうことができました。

事前の情報収集の有り難さが身に沁みて分かりました。

伊ケ崎先生、ありがとうございました。

7/15(日)

(一社)東洋はり医学会関西7月例会終了後、ボランティアの呼び掛けに集まってくれた、松山晋一先生、山内健太郎先生(共に本会指導講師)、西口陽子先生、野田裕貴先生と私を含めた5名で大阪から岡山へ出発しました。

■右から中野、松山、山内、野田、西口。


会員のみなさまにおかれましては、ボランティアにかかる諸経費をカンパしていただき、また出向式まで執り行っていただきありがとうございました。

■熱い気持ちを託してくださった会員のみなさんと、代表して渡してくださった宮脇優輝名誉会長。


大阪から倉敷まで車で2時間半で着きました。

その夜は、市内のビジネスホテルに泊まりました。

暑さで体力を奪われるので、車中泊や徹夜での現地入りは絶対にするべきではありません。

熱中症で緊急搬送される方々が日増しになっていますが、その半分がボランティアの方々です。

ボランティアの方々が倒れて一番ショックを受けるのは被災者です。

特に医療支援をする我々にはあってはならないことです。

万全を期して臨まなければなりません。


また、お約束ごととして、災害ボランティアをする場合は事前にボランティア活動保険に入りましょう。

7/16(月)

倉敷市保健所災害対策本部にて救護班登録を行い、9時から医療班のミーティングに参加しました。

このミーティングには様々な医療従事者が参加し、刻一刻と変わる避難所の医療ニーズに対応できるよう情報を共有します。

災害コーディネータ-と、3年前に受講したJIMTEF災害医療研修でご指導いただいたDMAT(災害派遣医療チーム)の近藤久禎先生に、我々の特性をお伝えさせていただいたところ、真備町の岡田小学校に開設されている避難所を紹介していただきました。

■近藤先生。

倉敷から5キロ程車を走らせると急激に景色が変わりました。

砂ぼこり、押し倒された木、濁った川の色、すれ違う自衛隊車両、何と言っても水害の傷跡が今だ激しい家屋の数々。

一概に言えないですが、この日は片付け作業のボランティアが足りていない印象を受けました。

岡田小学校に到着後、医療支援の受付をしました。

本会相談役の丸尾頼廉先生にお借りした簡易ベッドを3台積んできましたが、設置する場所がないとのことで、避難所になっている体育館を直接巡回して希望者をその場で治療することになりました。

巡回に先駆けて職員の方が校内放送で「今から皮膚疾患の治療をされる鍼灸師の先生方が避難所を巡回されるので症状のある方は申し出てください。」と呼びかけてくださいました。

■200数名が避難されている真備町岡田小学校。


体育館に入ると段ボールベッドが設置されており、カーテンを下ろせばプライベートが仕切れるようになっていました。

今朝からようやく設置できたとのことでした。


10時過ぎから巡回を開始し、一人一人お声がけをし、希望者を治療していきました。


子供の治療が多かったですが、アトピーの悪化やとびひはあまりなく、大半が汗疹によるかゆみでした。

もちろん皮膚疾患以外も受け付けました。

年配の方では疲労や疼痛が多く、中には老人性皮膚掻痒症を訴える方もおられました。

本治法による生命力の強化に主眼をおき、必要に応じて最小限度の補助療法、標治法を行いました。

■てい鍼で本治法。子供たちも興味津々でした(*^^*)


汗疹のかゆみには、前肩髃と蠡溝のお灸が即効性がありました。

火気は使えないので最初から電子灸を使って施灸しました。

火を使わないので熱くなく恐くなくしかも時短で、一番小さい子で2才の男児も泣かずに受けてくれました。

前肩髃も蠡溝も右側を多壮(10壮)し、左側は少なく(4壮)します。

吹き出物が気になる子には合谷、水害前からの症状ですが火傷痕が中々癒えない子が二人おりその子たちには支正にお灸をしました。

■電子灸で熱くなく恐くなく安心安全に。


子供も大人も、誤治とドーゼオーバーに細心の注意を払いました。

これに関しては、15日の例会終了後に5人で病体把握の特訓をしたのと、その晩のホテルでも明日に支障がでないギリギリまで、正しい証決定、正しい適応側、正しい選穴、正しい用鍼選びができるようになるまで徹底してやったのが活きました。

腎虚証が圧倒的に多かったです。

恐ろしい目にあったのだから当然です。

結果から鑑みれば、暑さによる汗疹もそうだけど精神的なものも影響して皮膚のトラブルを起こしているとも考えられます。

15時過ぎまでケアを続けて一段落したので終了しました。

意外だったのが、日中ご自宅の片付けに出ておられる大人の方たちが14時頃に結構避難所に戻って来られていました。 

この酷暑の中、長時間の連続した作業は肉体的に相当ハードです。

暑さがよりきつくなるのなら、体力が夜までもたなくなるので大人の医療ニーズは夜間だけではなくなるかもしれません。


避難所をあとにし、倉敷市保健所に戻りました。

■ボランティアの方々を搬送するバス。


災害対策本部で、本部長、近藤先生、J-SPEED(災害時診療概況報告システム)に活動報告をしました。

活動報告や現場で得られた医療ニーズ以外の被災者の声などもご報告させていただきましたが、こちらが報告するだけでなく、他の避難所の新しい情報を提供してくださったりとか、どの立場の先生方も同じ目線で接してくださり、鍼灸師を大事な資源として見ていただいているのを強く感じました。

これは、岡山県と防災協定を結ばれている県鍼灸師会、鍼灸マッサージ師会の先生方が地道な努力を続けて信頼関係を構築されてこられた以外にほかはないと思います。


今回は学術団体として参加させていただきましたが、私は師会の方では和歌山に所属しています。

災害医療における岡山県の先駆的な多職種連携は、大変に見倣わなければならないなと心に強く思いました。


本部への完了報告で終わりではなく、最後に大事な仕事が残っています。

地元の先生方にお返しするために、伊ケ崎先生に活動報告と得られた全ての情報をご提供させていただきました。

遅い時間にお電話で失礼しました。


地元の先生方にお返しすることを近藤先生始め他県から応援に駆けつけておられる先生方が口を酸っぱくして仰っておられますが、鍼灸師もやはりそうであるべきです。


今回私たちは、皮膚疾患のある子供たちに向けてケア活動を行いましたが、夜間には日中ご自宅の片付けで石灰を浴びた大人のかゆみや肌のただれといった新たな医療ニーズが出てきているとJ-SPEEDの方で教えていただきました。

県鍼灸師会、鍼灸マッサージ師会の先生方には引き続き医療支援の方をよろしくお願い申し上げます。

また、岡田小学校の子供たちはサッカーが大好きで熱中症を吹き飛ばすくらい汗だくになって元気にボールを追いかけていました。

女の子もビックリするくらい上手でした。


診療の合間や診療後に、被災者だけでなくボランティアの方々の心身のケアまで幅広くケア活動をされることは大変な労力です。

本当に頭が下がります。

地元の先生方あってこその鍼灸ボランティアです。

くれぐれもご自愛くださいませ。


最後に今回のボランティアに際し、ご支援いただいた全てのみなさまに感謝申し上げます。

ありがとうございました。

松山、山内、西口、野田の4先生、本当にお疲れさまでした。

頼れるみなさんがいてくれたお陰でとても心強かったです。

ありがとうございました。

みなさんを誇りに思います。