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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

ロマン派以後12-トスカと世紀末イタリア

2023.07.12 12:17

1900年1月14日、プッチーニの歌劇「トスカ」が初演された。このオペラは知っての通り、ナポレオン戦争が舞台となっている。オペラの当時は、ローマはナポリ王国の支配にあり、悪役スカルッピアは恐怖政治を行い、政治犯を捕らえる。そして歌姫トスカの恋人も捕らえられるというストーリー。

制作当時のイタリアでは現実主義のヴェリズモが流行し、プッチーニの前作「ラ・ボエーム」も、パリの貧しいボヘミアンを描いている。トスカは歴史劇といえるが、なかなかそうともいえない。1898年からパンの価格高騰で大暴動がシチリアから広がり、北部に波及していた。

ミラノでは、労働者らのデモに軍が発砲し、100人以上が殺害されるという事件が発生、国王ウンベルト1世は鎮圧した将軍を称賛し騎士の称号を与えた。99年には治安維持法が提案されるなど弾圧の時代だった。なんと自由を求めるトスカのストーリーは現実の話だったのだ。

トスカはスカルッピアを殺害し、恋人を助けられず自殺する。血塗られたストーリーをプッチーニの劇的な音楽が彩る。舞台は終わるが、ストーリー後ナポレオンによって反動が終わる。当時の現実もこのままでは終わらず、1900年7月24日、伊国王ウンベルト1世が「虐殺への報復」で暗殺されるのだ。