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いわぶち動物病院

麻酔と手術と腎不全

2023.07.13 07:11

手術後、腎不全になる可能性に関してお話しいたします。


まず最初に、基本的には若齢のワンちゃん猫ちゃんの場合であれば、腎不全になることはまず無いと思って頂いて大丈夫です。


問題は高齢の場合、術前の血液検査において腎障害が認められたり、血液検査では見つからないレベルの腎障害が実は存在していた場合です。


鎮静程度なら全く問題にならなくても、全身麻酔をかけるとどうしても血圧低下、手術内容によってはそれなりの出血を起こす場合がありえます。

この出血と血圧低下が急性腎不全の原因になることがあります。


腎臓の機能がどのくらい残っているのか?というのは病院の検査では完全には調べることができず、院内で判別できるのは、腎機能が25%以下になってからでしかありません。


外注検査であれば、やっと腎機能が50%以上残っているのかどうかを調べることができます。


つい先日も、子宮蓄膿症になって来院し、血液検査によって、腎機能が25%以下になっていることが判明したワンちゃんがいたのですが、血圧低下を抑えるためのドパミンやドブタミンを使用して手術しても、酷い腎不全になってしまいました。


ただし、このワンちゃんの場合、病院を怖がって、外に連れて行っても排尿しませんでした。


ドパミン、ドブタミンは腎臓への血流を増やして、排尿量を多くすることで腎臓の負担を軽減します。

尿をしなければ、余計に腎不全を助長してしまうことが予想されました。

(通常、ドパミン、ドブタミンは利尿作用もあるため、このワンちゃんは無理やり尿をするのを我慢していたのだと思います)


その後は朝、半日入院してとブタミン点滴、夕方返してオシッコをさせてもらうという形を取っていたのですが、腎不全は改善せず、それ以前の急性腎不全時に起こる、消化管のダメージにより、吐血、下血を繰り返して亡くなってしまいました。


腎不全は非常に恐ろしい病気です。肝臓が肝不全になるまでには、腫瘍ができたり、胆嚢が破裂したりしなければ、かなり猶予があります。


ですが、腎不全になる時はいつでも突然です(慢性腎臓病に気づいておらず、急性の腎不全に移行することはあります)。

今回の子宮蓄膿症のように、手術をしなければ突然死を起こす病気の場合、腎臓が危ないとわかっていても手術せざるを得ないこともあります。



毎度言っていることですが、やはり老齢になってから手術が必要になるようなことに関しては、あらかじめ予防をしてしまうのが一番です。


皆さんのペットも、いつかこういう二択が迫られる状況になるかもしれません。

そのうちの片方の不安要素を最初から消し去ってしまっておく、というのはとても重要なことだと思います。



(珍しい例として、完全に腎不全だった子が、手術の際のドパミン点滴により、逆に腎不全が治った例もあったりはします)