in the 地獄

悪夢にはワーカーホリックがいる

2018.07.18 22:23

悪夢にも人を選ぶ権利があるのではないか。

幸せで元気な人、不幸せで元気じゃない人、二種類の人がいたとします。


元気な人が悪夢を見たとする。

例えば怪物に追いかけられて死にそうになりながら逃げて、最終的にビルから飛び降りなければいけない。

もちろん夢だと気付かずに必死で逃げるから、焦る。怖い。

ビルから飛び降りた瞬間、「うわ!」と飛び起きる。

息づかいは荒く、冷や汗をかいている。

状況が理解できずに、ここはどこだ、なんて思う。

しかしだんだん頭が冴えてきて、あ、さっきのは夢だと理解する。

「なぁんだ、良かった」なんて背伸びしながらおはよう。

なんなら隣で寝ている恋人を起こして、こんな夢を見た、なんて話すかもしれない。

朝からイチャイチャ。流れで1発おっぱじめるかも。減点だ。帰れ。一生悪夢にうなされてろ。


今度は元気がない人が悪夢を見る。

プッチンプリンがうまくお皿に盛れない。

プッチンしても出てこない悪夢だ。

いくら振っても、いくら叩いてもプッチンプリンは容器に居座る。

そのまま食べれば良い、なんて考えには至らない。

なぜなら悪夢だからだ。

そのうちハッと目が覚める。

なぜだか冷や汗かいてるし、起きた瞬間ため息が出る。

もちろん恋人なんていない。せんべい布団に一人。

時計を見て、もう仕事の準備しなきゃ、と嫌々布団から這い出す。

寝巻きを脱いで、しわくちゃなズボンを履こうとしてよろける。

あっ、書いてて悲しくなってきた。


悪夢にも人を選ぶ権利がある。

昔の悪夢は、悪魔によってもたらされているものだと考えられていた。

ということは悪魔の仕事は悪夢を見せることだ。

ひいてはその仕事とは、人にダメージを与えること。


そこで元気がある人、ない人、どちらに労力をさきたいか、を考えると、やはりない人ではないか。

元気がある人はハリウッド映画のような悪夢を見せたところで、現実に戻ったら幸せが待っている。セックスだって始まる可能性がある。

一方元気がない人であれば、プッチンプリンで最悪な一日のスタートを切らせられる。なんならプッチンプリン食べながら悪夢を見せられるだろう。片手間もいいとこだ。許すまじプッチンプリン。


という風に、悪魔の労力を考えるとまず間違いなく、元気がない人に悪夢を見せた方が効率がいい。

中には「元気があるヤツに見せないと張り合いがない」と考えているワーカーホリックがいるかもしれないが、一緒の給料なら楽したいと考える悪魔は多いはずだ。

そう、現実世界と同じように。

現実は悪夢なのかもしれない。

チャンチャン。