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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

姿勢と腰痛は関係ないです。

2018.07.21 07:20

こんにちは。理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。

今日は、姿勢と腰痛の関係について書きます。『姿勢と腰痛は関係ない』というのが私のスタンスです。 このようなスタンスのリハ専門職の方は少数だと思います。ですが、現存するエビデンスからはそう判断するのが最も合理的です。 私は、基本的に自分の考えと、なにかしらの根拠に基づく主張は分けて考えるようにしています。この私のスタンスは、根拠に基づいたものです。

『姿勢と腰痛は関係ないです』と言っている質の高い研究はあります。

例えば、

①The association between static pelvic asymmetry and low back pain.

 Levangie PK, 1999年,spine

 研究チームは、骨盤の傾きなどのいかなるパラメーターとも腰痛の関連を見いだせなかったと結論しています。

他には

②The lumbar lordosis in acute and chronic low-back pain.

 Hansson T J et al, spine, 1985

  研究チームは、年齢・職業をマッチさせた健常者、急性腰痛患者、慢性腰痛患者各200名を横からの方向でレントゲン撮影し、骨盤と背骨の位置関係を調べたところ、全く差がなかったと報告しています。

などがあります。

しかしながら、姿勢と腰痛の関係を明らかにした質の高い研究はないはずです。 『はずです』という歯切れの悪い表現を使ったのは、『研究論文がある』ことを証明するのは簡単です(一つ見つければいい)が、『研究論文がない』ことを証明することは難しいです(どこまで調べても抜け漏れがあるかもしれないから)。

ですが、仮に一つ二つの質の高い「姿勢と腰痛は関係あるよ」という論文が見つかっても、結論は大きく変わらないと思います(その研究の質・規模にもよりますが・・・)。 ある程度まとまった数の『関係ないよ』派の論文が出ているからです。

我々は二つのことが同時に起きていると「そのふたつの間には因果関係があるんだ」と考えてしまう『思考のクセ』を持っています。しかも、そのふたつの間に、姿勢と腰痛の様に、関連が容易に想定できる関係がある場合、そのクセはさらに強く出てしまいます。

『姿勢が悪いと腰が痛くなる』というのは、なんだか非常に説得力のある仮説です。しかしながら、きちんと科学的に検証されなければ『雨乞いを怠ったから雨が降らなかった』と同じレベルの話になってしまいます。

姿勢が、いわゆる『根本原因』でない以上、ここにアプローチするリハビリはナンセンスです。腰痛を改善するもしくは予防する、いわゆる『良い姿勢』というのは存在しません。少なくとも2018年の現在まで、発見した人間は人類史上一人もいません。

ただ、姿勢に関してアドバイスをする方が、人類史上初めての発見者である可能性を私は否定しません。ですが、自身が革新的な的な発見したことを科学的な手順でもって証明して頂かないといけません。

こういう話をすると、おそらく、『でも、私は姿勢を改善することで患者さんの腰痛を治しているよ。やっぱり姿勢を改善することは腰痛治療に重要だよ。』と考える方がいらっしゃると思います。でもその『治療した→治った→その治療が効いた』という思考の流れは、『雨乞いをした→雨が降った→雨乞いが効いた』という思考の流れと全く同じです(3たの理論といいます)。 21世紀に生きる私たちは研究デザインと統計の知識を活用することで、この3たの理論を抜け出すことができます。

腰痛患者さんにもこれらの研究結果から導かれた『真実』が届くといいなと思います。

今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 理学療法士 倉形裕史