腰痛に対するコルセットの装着は効果も不利益もありません。①
おはようございます。理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。
昨日、腰痛に関する内容を書きました。良い機会(?)なので、もう一つ論文を紹介したいと思います。
です。
タイトルを日本語に訳すとしたら、
『予防的コルセットの、腹部筋力と労働現場における腰痛への影響』といった感じでしょうか。
下記で研究の概要を図示しました。
運搬業の会社の従業員を被験者にした研究です。
800人以上の従業員の中から90人の男性職員をピックアップし、無作為に30名ずつ3グループに分けました。
- 何もしないグループ
- 時間の運搬方法に関する講義を受けてもらうグループ
- 2のグループが受けた講義に加え、オーダーメイドのコルセットを処方されたグループ
開始時と6か月後に下記を測定・・・
1.腰痛の発生率
2.腰痛による欠勤日数
3.腹筋力・背筋力
結果は、3グループにおいていずれにも差がなかった。というデータが出ました。
つまり、コルセットはオーダーメイドで作成しても、腰痛の発生もそれに伴う欠勤も減らすことができないということです。つまり、効果はないです。
ここからは、医療関係者の方向けの話です。
この研究は、いわゆる『ランダム化』試験です。90人の対象者を無作為(ランダム)に3グループに分けています。ただし、『盲検化』はされていません。盲検化とは、研究対象になった90名の方、講義やコルセットを提供した側の両方(もしくは対象者だけ)が、誰がどのグループに振り分けられたかをわからなくすることを指します。
つまり、つまりこの研究では、研究対象者も、講義やコルセットを提供した側も、誰がどの介入を受けたか知っていました。隠しようがないので、おそらくみんな知っていたことでしょう( ゚Д゚)。
『ランダム化』と『盲検化』は、研究の信頼性を高めるために重要な要素です。ですがこの研究は『盲検化』が不十分です。
では、この研究結果は信頼できない、意味のないものか?
私はそうは思いません。なぜならば、プラセボ効果(治療に対する期待による症状改善効果)は、何もしなかった①グループの対象者よりも、何かしらの介入を行った②・③グループの対象者により強く発生していると考えられるからです。つまり、この研究方法で、①と比較して②・③グループが良い結果が出た場合は、その効果を少し差し引いて考える必要があると思います。しかし、この研究のデータは、効果の差がありません。したがって、より確信を持って『運搬方法の指導とコルセットは効果がないよ(もしくは害すらある?)』と言えると私は考えます。
ただ、データの解釈という点で、ここには少し議論の余地があるかもしれません。
以上、医療関係者への話はおしまい。
長くなりましたので、次回に続きます。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
理学療法士 倉形裕史