「古志」福岡句会(7月)を終えて 2
あらためて福岡句会での特選句から。
急に出る長崎弁と雨蛙 吉冨緑
ふだんは標準語などで喋っているのでしょう。
しかし、ふいに故郷の言葉が出てしまうのです。
しかも、それが雨蛙がひょいと飛び出すような感じだというのです。
長崎弁が急に出るのは、ご自身のことだそうですが、ユニークな境涯句です。
おなじく、
熱帯魚いつまでたつてもお客さん 吉冨緑
熱帯魚は人に懐きませんので、飼っていてもずっとよそよそしい感じがあります。
そこをうまく捉えています。
熱帯魚の鮮やかな色彩が、かえってアンニュイに映ります。
同時に「いつまでたつてもお客さん」というのは、
人間に対する悪口で使われることばですから、
どこかじぶんや他人に向けられた一句として響くところもあります。
こころ今兄と蝉とるうらの山 ももたなおよ
いまはもうこの世にいない兄です。
実家の裏にある山なのでしょうが、
おとなになり、年をとって、もう山に入ることもないのでしょう。
こころだけはいまも兄と裏山で蝉をとって遊んでいるのです。
素朴ですが、深い思いがこめられています。
この句のように、俳句は届かない思いを形にすることができます。
山笠舁くや夕立も勢ひ水にして 矢田民也
「夕立くらい、なんのその」という山笠の気概が伝わってくる句です。
山笠は観客も雨具を用意しないといけないほど、
はげしく「勢ひ水」(きおいみず)を浴びせます。
矢田さんは句会中、山笠のさまざなことを解説してくださいました。
この時期の博多ならではであり、充実の句会でした。
支部長の斉藤真知子さんのご人徳もあり、
福岡句会は「古志」でもとくに勢いのある支部の一つになっています。
ぜひ福岡の方、近隣の方はご参加ください。
以下、おまけです。
この時期は桃でした。(季語としては初秋ですが)
東京表参道で大行列のお店の姉妹店です。
こちらではさほど並びません。
テイクアウトして家で食べました。
以上、福岡でした。
福岡旅行・吟行の際のご参考になれば幸いです。