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Fashion source: Daily Journal

辻井伸行さん・オーケストラ・アンサンブル金沢@オペラシティ

2023.07.20 00:42

 朝、窓を開けると外から車のクラクションの音が聞こえました。「ラの音だわ」と思ったのと同時に、昨日のピアノコンサートで、第一バイオリンの人がピアノの「ラ」の音を弾いて、チューニングしていた音と同じであると気づきました。(笑)

 昨日はオペラシティで行われた辻井伸行とオーケストラのコンサートへ。今回は2階席1列目の見下ろせる場所です。オーケストラのときは、全体が見えたほうが面白味があるのを知ってしまったので、チケットを買うときに選んだ席です。

 オーケストラ・アンサンブル金沢は、オーケストラの人数が割と少なめで。左側のバイオリンゾーンは、通常の半分くらいの演奏者でした。フルート、クラリネット、ファゴット、トランペット、ホルンなどの金管楽器も2名ずつで、パーカッションエリアは見えずに残念でした。

 指揮者の方は、フランス人とボリビア人のハーフで、スイス生まれ。(笑)割と細身な方で、指揮者のイメージと少し違う感じもしましたが、ニコニコとタクトを振っているのが印象的な優しそうな方でした。

 辻井さんの登場は、前半の2曲目、シューマン「ピアノ協奏曲イ短調Op.54」です。

(以下の曲です。ほかの方の演奏です)

 シューマンのこの協奏曲は、その美しさ、力強さ、そして深い感情の表現が絶妙に調和した、まさに名作と呼ぶにふさわしい作品です。

 辻井さんは、間奏で汗を拭きながら、いつもより顔も赤らめながら、演奏されていました。オーケストラの指揮ももちろん見えないですし、それなのにオーケストラとぴったりと息の合った演奏であることは、本当に神がかっているとしか思えません。

 第一楽章では、ピアノは情熱的で情感豊かな旋律を紡ぎ出し、力強さと優雅さが同居する音色に魅了され、第二楽章のピアノは、美しい旋律と優雅な触れ合いは、静かな語り口で、深く、微細に、そして感情的に聴く者の心に訴えてきます。最終楽章では、力強くて明るいピアノ音色が鮮やかに鳴り響き、聴く者全てを勇ましい結末へと導き、聴いているほうも満足感に浸ることができました。オーケストラの人たちもたくさんいますが、やはりピアノ奏者が一番の主役のように見えますね。辻井さんは、なんども指揮者と一緒に出入りを繰り返し、そのたびに拍手喝采に包まれます。そして、アンコールは2曲弾いてくださいました。


①ショパン ノクターン第20番 嬰ハ短調「遺作」 

アンコ―ルは、何の曲を弾くのか、知らされないことが多いので、イントロクイズです。(笑)鼻歌で歌えるけど、曲名がわからない。ショパンであることは分かったのですが。優雅で微細な旋律が織りなす音楽です。心を静め、内なる世界に心を向けさせるような曲です。辻井さんも静かに重くしっとりと奏でていました。後から曲名を知って、「あ!」となりました。


②ショパン「革命」

 ドのオクターブではじまるこの曲、すぐにわかりました。フジコ・ヘミングさんのコンサートで毎回弾かれる曲ですからね。なので、私の身体ではフジコの革命がインストールされているので、辻井さんの革命のスピードが、フジコさんの1.5倍速くらいに感じました。(笑)

 フジコさんの革命が、ジワジワと、木枯らしのなかにうずくまりながら革命を起こしていくような、葛藤の多い革命で、(笑)なかなかフジコさんの革命が好きかもしれません。

 辻井さんは、アンコールの2曲目ですし、颯爽と出てきて、すぐに着席して、すぐ弾く辻井さんのおちゃめな感じもいいですね。

 たくさんの拍手が鳴りやまない! なぜなら、辻井さんが拍手を浴びているかのように、少し顔を上に向けて、ニコニコしているからです。目で見えないから、こちらも音で感謝と感動を伝えたいと思い、それを受け止めている辻井さんにまた感動して、拍手が止まらないのです。辻井さんも大満足のご様子で、左手で観客に手を振って、ニヤニヤしていました。(笑笑いが起こりました。)今日も素晴らしい演奏をありがとうございました。


 後編はベートーヴェン「運命」です。第一楽章は全てメロディーラインを覚えているくらい、何度も聞いたことがありますが、実際にオーケストラで聴くのははじめてでした。

 ベートーヴェンの「運命」は、その音楽の中に秘められた強烈な情緒と、楽器間のバランスが完璧に調和した演奏を通して、人間の精神の底力を描き出す名作です。それは私たちを音楽の深部へと誘い、避けられない運命との闘い、そして最終的な解放と喜びの瞬間を体験させてくれます。

 前半のシューマンではでてこなかったピッコロや、コントラファゴットもでてきまして、「運命」は、オーケストラの各楽器が協力して劇的な音楽的ストーリーを展開する作品だなと思いました。金管楽器のそれぞれの音の特徴を生かして、際立ってくるところが、音楽的ストーリーテリングに大いに貢献しているようでした。金管楽器の役割を初めて感じられたことに感動すら覚えました。

 音楽を聴いているだけでは、そこまで想像することは難しいですが、こうしてオーケストラを目の前に、音が指揮者と演奏者と楽器と結びつくことでの贅沢感。なんとなく、観客もソロピアノの時よりも、男性客が多い気もしました。2階席から身を乗り出すようにして見ているおじさまたちも結構いらっしゃいました。

 ここ数年、ソロピアノだけでなく、ピアノ協奏曲なオーケストラ鑑賞を繰り返してきたことで、オーケストラの楽しさがわかってきたことは嬉しいです。

 次回は、9/30のサントリーホールのチケットを買いました。辻井さんが、久石譲・坂本龍一さんの曲を弾くようです!