『地上の見知らぬ少年』:J・M・G・ル・クレジオ/鈴木雅生訳
2018.07.22 06:34
何てまどろっこしいのだろう、言葉ってやつは。何てのろのろしてるんだろう、思考ってやつは。
そんなものは海藻で重たくなった海の、もったりと柔らかいうねりだ、内部では何もかもがぐらぐらと煮えたぎり、しぶきをあげているというのに。走れ、ひんやりとした空気を突っ切って、街路から街路へ、夜のあいだずっと。走るんだ。風が着ているものを吹き抜け、皮膚を吹き抜け、そして頭のてっぺんから足先まで貫いているこの苦痛に満ちた通路に吹いて、ぼくを音楽と平和でいっぱいに満たすまで。[p.10]