シニアワインエキスパート(シニアソムリエ) 1次試験合格の絶対条件とは?
サイエンスの話題ではありませんが、2017年に受験した日本ソムリエ協会シニアワインエキスパート(シニアソムリエ)1次試験について書こうと思います。
シニアワインエキスパートは、年齢30歳以上、ワインエキスパート保持者で認定後5年以上経過しないと受験することが出来ない資格です。アマチュアワイン資格の中では最高峰であり、資格保持者は2018年1月現在465名いらっしゃいます。2017年の合格者数は39名で一般的には難関資格と言われています。教本によると「ハイレベルな知識と技術、シェフソムリエ、チーフ、エデュケーターとしての資質が認められる」と定義されていますがシニアソムリエの記述のようです。
昨年1年がかりの取り組みでしたが、なんとかシニアワインエキスパートに合格しました。その際に2017年の1次試験の問題を分析し、どのような勉強方法が最も効率的、効果的だったのか私なりにまとめましたのでブログに残しておきたいと思っています。シニアソムリエも1次の内容はほとんど一緒ですので参考にしてください。
【2017年一次出題問題分析】
まず2017年の一次の問題数ですが、73問が出題されました。1問中に複数の回答を求める問題があり、総問題数は80問でした。その中で選択問題は63問、シニア資格最大の課題である筆記問題は17問でした。原語回答は13問(Constantia, Erste Lage, ブルガリア産地3つ、Baco Noir, Cava de Paraje Calificado, Rousette de Savoie, Cairanne, Michel Brajkovich, Bairrada, Munţii Carpaţi (教本上の表記”Carpathian Mountains”は英語のため不正解の可能性あり), Maribor)、日本語回答は2問(球磨、城の平)、英語による設問は2問でしたが(ヴェレゾン、 カンテイロ)、回答も英語が必要なのか日本語でも良いのかは協会からの公式解答がないためわかりません。原語での回答問題の難易度はきわめて高く、Cava de Paraje Calificado, Michel Brajkovich, Munţii Carpaţi , Mariborの4つは教本自体にも原語の表記がありませんでした。しかし、17問中12問はフォローアップセミナー※1でスライド上に記載があり、講師から強調されたように感じました。
ではどのソースから出題されたのか分析しました。すると、教本からの出題は68問85%(68/80)、教本記載なし・フォローアップセミナーでのみ言及されていた問題(ナパ・オークション、AO-YUN、キャンティ・クラシッコ・グラン・セレツィオーネ、Asado、Catena、WO Cape town)は7問9%(7/80)、教本・フォローアップセミナーいずれにも情報がない問題(2016年ブルゴーニュの雹、TDN、ワインの酸敗(酢酸エチル)、ドゥニ・ドゥプリュデュー教授、Kolvin)は5問6%(5/80)でした。また私の主観ですが、フォローアップセミナーで強調され、実際に出題された問題は30問38%(30/80)でした。フォローアップセミナーの重要性はシニア資格では際立っています。
教本を構成する生産国などの各章のページ数が大きく異なりますが、587ページ※2の教本に取り組むに当たっては学習する順番も大事であると考えています。例えば2017年教本で、10ページに満たない章は29章中11章ありますが(ギリシャ、カナダ、ハンガリー、アルゼンチン、日本酒、クロアチア、ルーマニア、ブルガリア、イギリス、スロヴェニア、ルクセンブルグ)、これらの国から15問出題され、その出題割合は22%(15/68)、11章でわずか61ページですので勉強するには大変効率がよいことになります。また本年は教本最多ページ数のフランス、イタリア、日本からの出題は多くありませんでした(13問16%)。この3国を除いても教本からの出題の81%(55/68)をカバー出来、3か国を除いたページ数は347ページ; 59%(347/587)でした。
今回教本から最も出題の多かった章は、酒類飲料概論、アメリカであり8問出題されました。特に酒類飲料概論は、ワイン生産国と比較すると問題自体容易だった印象です。また、ワインの購入・保管・熟成・販売、日本酒は3問、2問出題され、こちらも難しい問題はありませんでした。資格の特性かもしれませんが、醸造方法や栽培について、またワインの販売について教本以上の範囲を出題する必要性は少ないでしょうし、日本酒に関してもサケディプロマとの棲み分けを考えると、こちらも教本以上の情報が必要となる合理的な理由は見当たりません。わずか50ページで13問の出題を考えると、この3章は昨年のシニア試験の中では金脈と言えたでしょう。
※1 :日本ソムリエ協会主催 基本技術フォローアップセミナーのこと 以下協会説明
「ソムリエ・ワインエキスパート資格保有者を対象とした、資格取得後の向学機会の創出により、資格保有者のレベルアップ、士気向上、コミュニケーションを測ることを目的としています。めまぐるしく変化するワイン産業の中で、さらなる自信の研鑽のために受験資格を満たす方々には是非ともシニア呼称へのチャレンジをお勧め致します。」
※2:2017年出題対象のページのみ抜粋すると587ページ
【学習の基本】
では2017年試験を振り返った結果、シニアに向けた学習の基本は以下の通りになると考えています。
この4点を原則として学習を進めることが一次対策としては合理的だと考えています。
【私の学習法】
ではここから私なりの学習法について記載します。知識を定着させる方法は人それぞれだと思いますが、私はペンキを上塗りして塗り固めていくイメージです。一度の学習で定着する知識は多くなく、何度も何度も違う切り口で覚えたい事柄に触れていくことで徐々に記憶に定着していくと考えています。そこで、大事なのは“読む”“書く”“解く”ではないでしょうか?このプロセスで何度も触れていくことで、「暗記できていないかもしれない」という不安が軽減していきます。ワインスクールなどに行かれている方にはこれに“聞く”が加わるかもしれませんね。
“読む”ポイントは、教本の全体を隈なく行うことが大事です。ワイン産地の物語に思いを馳せながら全体の構造をつかみましょう。まずは全ページを読んでみることで全体像を理解します。
次に“書く”ですが、“読む”ことで得られた情報を自分なりにノート等にまとめていくことで、優先順位付けができ、話が整理され、前後の関連付けが行えます。時間はかかりますがこのステップはとても大事です。
そして最後に“解く”ですが、覚えているはずの知識が本当に覚えられているか確認します。弱点が浮き彫りになり効果的です。但し問題頼みになり過ぎてしまうと出題された問題のみ印象強く定着し、それ以外の問題には対応できなくなる可能性があるので、頼りにしすぎないことが大切です。
【シニア試験に向けた学習スケジュール】
この学習方法をベースに2018年をイメージしてスケジュールを作ってみました。注目していただきたいのは1週間の学習時間です。最初はゆとりを持って6時間/週、3ヶ月前からは12時間/週、試験の前月からは24時間/週のイメージです。多くの方はお仕事と平行して勉強に望まれると思います。では直前2ヶ月をイメージしてみてください。1週間で24時間の勉強時間を皆さんは確保できるでしょうか?私は土日に各8時間、平日4日を各2時間勉強しました。こうなると仕事後毎日真っ直ぐ家に帰るしかありませんよね?ワイン仲間ともしばらくお別れしました(試験終了まで連絡してこないようにお願いしました)。
【シニア合格への絶対条件】
シニア資格1次合格に要した時間を換算すると、ワインスクールの授業は含めず、自己学習に限定して250~350時間程度ではないかと考えています。つまり時間の確保がとても大事です。どんなに賢い人でも勉強時間を捻出できなければ絶対に受かりません。実はこれが合格の絶対条件なんです。忙しい毎日を過ごしている方にはとても過酷な試験ですが、ある程度自分の時間をコントロールできる方には有利です。
では皆様の合格を心から願っていますし、是非悔いのないチャレンジをして下さいね。このブログが少しでも参考になれば嬉しいです。 ご質問等がありましたら是非コメントしてください。
※最後に”解く”勉強をする際にお勧めのサイトであるワイン受験.comをご紹介します。山崎和夫先生が運営されているサイトです。
【特徴】
・綿密に傾向を分析して作られた問題集で、問題数約10万問ある
・試験問題がシャッフルされるので、繰り返し出来る
・各国ごとに単元化されているので、絞って実施できる
・スマートフォン等でも実施可能
・5,184円(税込)/1年間