『W旦那+(プラス)』 TAKAOMI⑨ 三代目妄想劇場ショートストーリー
公園に到着すると、真っ青な顔をしてマネージャーが巡査と話をしていた。
ポツポツと小雨が降ってきた。
車から降りた臣と隆二の元にマネージャーが走ってきた。
「申し訳ありません‼︎私が付いていながら、こんなことに…」
隆二が殴りかからんばかりに、マネージャーの襟元を掴んだ。
「どーして?どーしてたっくんが車を降りたんだ?」
「すみません‼︎お茶が飲みたい、自販機まで一緒に行くと言われてつい…」
隆二は愕然とした。
「…お茶⁉︎…お茶だって?」
「自販機の前で私の携帯が鳴り、ちょっと目を離した時に…」
殴りはしないだろうが、後ろから隆二の脇に手を入れ、マネージャーから引き離そうとした臣に、隆二が力なく寄りかかってきた。
「俺が…水筒を持たせてたら、こんなことには…」
マネージャーの襟元を持つ手も、力なく離れた。
「隆二くん‼︎申し訳ありません…!
取り返しのつかない事を…」
マネージャーの肩を直己が軽く叩いた。
「そんな反省してる暇があったら手分けして探そう!まだ行方不明になったとは限らないんだ」
「…す、すぐに公園の中や周辺をくまなく探しましたが、どこにもいないんです…」
「隆臣くん一人なら、あんな数分でそんなに遠くまで行くなんて考えられません!」
臣の腕の中でうなだれていた隆二はハッと我に返り、公園内に向かって走り出した。
「隆二っ‼︎…落ち着け!一人で行くな…」
臣の制止も間に合わず、すぐに姿が見えなくなった。
「今は何を言っても無駄だ!俺らも手分けして探そう!」
直己が手早く全員を四方に振り分け、みんな散り散りに走り出していった。
「隆臣ーぃ!」
「隆臣くーん‼︎」
「たっくーん‼︎隆臣ーぃ‼︎…パパだよー!……返事してーっ‼︎たっくん…」
だんだんと大粒の雨に変わり、公園内や商店街も人影が少なくなっていく。
臣の心に、言いようのない不安が押し寄せてくる。
ーまさか…誘拐⁉︎
ー隆臣!どうか、無事でいてくれ!
つづく