横浜の海沿い地域を彩る「橋」
こんにちは、はまみらいプロジェクトの飯田です。
はまみらいプロジェクトは、横浜の海沿い地域をフィールドに活動を行っているプロジェクトです。
そんな横浜の海沿い地域には名だたる観光スポットが多く、毎日たくさんの人々で賑わっています。
今回の記事では、横浜の景色をささやかに彩る「橋」に焦点を当てながら、海沿い地域を散歩したいと思います!
※オレンジ色のピン:記事で紹介した橋
黄色のピン:橋の鑑賞スポット を示しています。
1. 万国橋
万国橋(ばんこくばし)は、馬車道と赤レンガ倉庫方面をつなぐ鉄筋コンクリート製のアーチ橋です。
[万国橋]
みなとみらいの代表的なフォトスポットとして橋からの眺めが人気な万国橋ですが、橋そのものも「かながわの橋100選」に選ばれているほどの美しさを持っています。
現在の万国橋は二代目で、初代のものは、明治時代に貿易量が増加した横浜港の急激な近代化を支えるために1904年に架けられました。
「万国」という名の通り、この橋を行き交う人や物が万国橋を通じて世界へとつながっているような気がしますね。
橋の欄干部分が石積みの構造になっているため、橋を下から見上げずとも、橋を渡りながら万国橋の趣を感じることができるのも特徴です。
[万国橋の欄干部分]
2. 港一号橋梁・港二号橋梁・港三号橋梁
港一号橋梁・港二号橋梁・港三号橋梁は、2つの人工島で構成される汽車道をつなぐトラス橋で、桜木町駅から海方面へ向かって一号、二号、三号と名付けられています。
[港一号橋梁]
[港二号橋梁]
[港三号橋梁]
3つの橋は、いずれも「『貿易立国の原点』横浜港発展の歩みを物語る近代化産業遺産群」として、経済産業省の近代化産業遺産に認定されています。
これら3つの橋の見た目はどれも似通っていますが、実は、港三号橋梁だけその歴史や構造が港一号橋梁・港二号橋梁と異なっています。
では、その違いについて見てみましょう!
港一号橋梁・港二号橋梁は、アメリカで製作された鋼製の部材をもとにして1909年に現地で架橋されました。
各橋の入口には “AMERICAN BRIDGE COMPANY OF NEW YORK U.S.A. 1907 ” の銘板が貼り付けられています。
[“AMERICAN BRIDGE COMPANY OF NEW YORK U.S.A. 1907 ”の銘板]
その一方で港三号橋梁は、もともとは北海道の夕張川橋梁で使用されていたものを、長さを少し短縮して現在の場所へ「移設されて架けられた橋」です。
また、港三号橋梁の構造は、
1. 他の2つの橋梁のように橋中央にアルファベットの “X” の形に鉄骨が組まれている部分を含まず、 “W” の形になるように鉄骨が組まれている
2. 他の2つの橋梁のように橋の天井部分に部材を持たず、橋の上方が開いている
の2点で港一号橋梁・港二号橋梁と異なっています。
[写真左:港二号橋梁、写真右:港三号橋梁]
写真からその違いが分かりますでしょうか。
港三号橋梁のような橋の構造形式は、イギリス式と言われています。
しかしイギリス式の構造形式では、大型化していく機関車の荷重に耐えることができなくなり、従来のイギリス式に替わってアメリカ式のより強い構造形式が用いられるようになっていきました。
こういった理由により、港三号橋梁は(他の2つの橋梁に比べて小規模に見えますが)、「イギリス式トラス橋」の遺構として今でも大切に保存されているのです。
港一号橋梁・港二号橋梁・港三号橋梁の3つの橋は、横浜の近代化を示す遺産として役割を果たしていることはもちろんのこと、世界的なトラス橋の進歩の歴史までも物語っている凄い橋ですね。
3. 霞橋
霞橋(かすみばし)は、港の見える丘公園から海方面へ向かう途中の、新山下運河に架けられている橋です。
[霞橋]
こちらも万国橋と同様に「かながわの橋100選」に選ばれています。
また、この霞橋も先ほど紹介した港三号橋梁のように、他の場所から移設して架けられた歴史を持っています。
もともとは1896年、隅田川に架かる鉄道橋として誕生しましたが、それから32年後に撤去、その後撤去した橋の一部を活用することで横浜市鶴見区と川崎市幸区をつなぐ跨線橋として生まれ変わるも、80年ほど使われた後にこれまた撤去されました。
二度目の撤去の際には地元の住民から惜しむ声が相次ぎ、その頃ちょうど架け替えが決まっていた霞橋へと移設してそれまでの橋を保全する運びとなりました。
周囲の環境にも配慮しながら撤去した部材を再々活用することによって2013年に完成した霞橋は、新山下運河の新たなシンボルとなっています。
[霞橋周辺の様子]
霞橋のすぐ近くまで道路や建物が接近しているため、橋に近づくとその大きさに圧倒されますが、大きな存在感を放ちながらもこの地域の風景にしっかりと溶け込んでいる姿が印象的でした。
4. おわりに
以上、橋から見る横浜の海沿い地域はいかがでしたか?
一言で「橋」と言っても、場所や時代により構造が様々であったり、橋の背景に様々な歴史が隠れていたりと、そこから分かることが意外にも多いことに驚きました。
「この橋綺麗だな」「この橋なんか良いな」などと感じながら橋を渡ってみると、まちを歩くのも少し楽しくなってオススメですよ!
※オレンジ色のピン:記事で紹介した橋
黄色のピン:橋の鑑賞スポット を示しています。
参考文献
・【横浜の橋】万国橋 - THE YOKOHAMA STANDARD
・【横浜の橋】港一号橋梁・港二号橋梁・港三号橋梁 - THE YOKOHAMA STANDARD
・明治時代に製作された鉄道トラス橋の歴史と現状(第4報) - 第8回 日本土木史研究発表会論文集
・引き継がれ、語り継がれる「霞橋」- 建設コンサルタンツ協会
都市科学部都市基盤学科 飯田理紗子