「動物再生医療の実用化を通じて動物とヒトの幸せを追求する」Vetanic Vol.7
ペット業界の未来を拓く、QAL経営 スペシャル鼎談
ゲスト
・枝村一弥(株式会社Vetanic社外取締役 技術ファウンダー、獣医師(博士))
・望月昭典(株式会社Vetanic代表取締役)
■チーム作りと役割。そしてこれからのiPS細胞の未来 続き
枝村:私たちにとってMSCはゴールではありません。10あったら1通過したくらいで、ここから研究開発が進み、たくさんの可能性を広げていきます。
実は私の大学時代の研究テーマは膵島移植でした。糖尿病の治療では、飼い主さんが動物を横にしてインスリンを毎日打たなければならず、それがとても苦痛なのです。
でも、膵島を移植することができれば、その後は全く治療がいりません。今は整形外科を担当しているので長くその夢は叶いませんでしたが、iPS細胞にふれたことで当時の夢を思い出しました。将来的にはランゲルハンス島の中でもβ細胞(血糖値が上がったらインスリンを分泌する細胞)を作ることも頭に入れています。
また、整形の観点では健康寿命の増進を行いたいと思っています。10歳以上のイヌの40%、12歳以上のネコの70%は軟骨に損傷があります。そのような症例に対して軟骨再生や関節炎が進みにくくなる細胞療法を提供することができるのです。
また、イヌの前十字靱帯は一度損傷すると元に戻らないため、骨の形を変形させる手術が行われています。それをiPS細胞から靭帯そのものを作って、ヒトのように治療することも医学部の先生と一緒に進めています。根本は医療に貢献しながら、iPS細胞でないとできないゴールも視野にいれています。
成功も失敗もしましたが、飛び石を渡るように進めていくことができています。今、チームがすごくやる気になっているので、一歩ずつですがゴールに近づいている感覚があります。
生田目:素晴らしいですね。欠損による問題がある組織や器官に機能が補充できれば、究極の再生医療になると思います。
枝村:そうです。たとえばフレンチブルドッグ、パグ、シーズーのような目が飛び出ているイヌへの培養角膜の移植もできるようになると思います。
そのような症例で重度な場合、現状では眼を摘出する手法も行われていますが、飼い主さんのために再生医療が選択できるようになれたらと思います。