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Evidence Based Physical Therapy - 理学療法士 倉形裕史のページ

腰痛を防ぐために、運搬方法を指導してはいけません。

2018.07.27 21:08

おはようございます。理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。

以前、腰痛に関していくつか記事を書きました。


『腰痛と姿勢は関係ない』

『腰痛に対してコルセットは効果も害もない』


今日はこれに加えて、また少しショッキングなことを書きます。

『腰痛予防・改善のために運搬方法の指導は効果がない(してはならない)』です。

話の前に注意点を一つ。動作の効率の良い(力の発揮しやすい)運搬方法はあり得ます。例えば足を大きめに開いて安定させるとか、下肢の大きな筋肉を使うことで持ち上げやすいとか。そういう方法を学ぶことは意義があると思います。ただし、効率の良い動作を行えば、腰痛を必ずしも防げる可能性が高まるわけではない。という点に注意して下さい。


効率の良い動作 ≠ 腰痛を防げる動作 

(イコールではありません)


根拠になっている論文は以前にも引用した

です。

この研究によれば、

①何も介入をされなったグループと、

②5時間にわたる運搬方法の指導を受けたグループで

     腰痛に関連する指標に差がありませんでした。

では、どのような指導がなされたか?TVなどでもよく見かけるいわゆる一般的な指導です。重量物を持ち上げるときは腰を曲げずに、しゃがみこんで、足の力をつかって持ち上げる。運搬時に腰を捻らないなどです。

このような指導は一般的な『腰痛教室』などでも提供されています。

ただし、このような指導は行っては『いけない』とヨーロッパのガイドラインで明言されています。

なぜか?

このガイドラインは2000年代の前半にはできています。

腰痛に関する治療方法の大きな転換(パラダイムシフトなんていいます)は既に起きていて、

従来のような『体のゆがみ』や『運搬方法』は、腰痛との関連がないか、あっても非常に希薄な関係であるとみなされるようになっています。

新しい(といっても10年以上前に既に提唱されている)方針としては、

「腰痛は、身体的な問題もだけど、精神的な問題も大いに関連しているよね~(*_*;」ということになっています。

で、何よりも大切なことは、「腰痛は怖いものではない」「安静にせずに動いたほうが治る」という正確な情報を患者さんが知って、怖がらずに動くことが大切だ!!と質の高い論文は言っています。

で、従来の腰に『負担の掛からない運搬方法』の指導は、患者さんの腰に対する不安を過度に煽ってしまい、結果的に腰痛を悪化させてしまうと考えられています。

ですのでこのような指導は行ってはいけない明言されています。一方、新しい治療方法に基づく患者さんの指導は推奨されていて、一言でいうと『怖がらずに動かそう』です。

『力の入りやすい運搬方法』の指導は積極的にやっていいです。ただし、ちょっと無理な体制で物を運搬した位で壊れるほど、人間の腰は脆弱ではありません。

背骨の一つ一つは、人体の中でも最も強力な靭帯のうちの一つで上下6箇所にわたって、上下の背骨と固定されています。つまり、腰は人体の中で脆弱なものではなく、人体の中で最も強固な部位の一つです。もし、長い間腰痛に悩まされている方には、どうかこの新しい方針を知って頂きたいです。

近年の腰痛研究は、腰痛が身体的(姿勢とか)問題でだけでは全く説明が出来ないため、長く続く腰痛患者さんの脳のMRIを撮るとかそういった研究がどんどん積み重なっています。

そんな話も機会があれば。。。

今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

Have a good weekend ‼ (とか言ってみる)

理学療法士 倉形裕史