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日常

2018.07.28 06:55

いつもより遅い時間の電車に乗った。

タイミングよく空席ができ、そこに座る。

中刷り広告や壁に貼られたポスターをぼんやり見ていると、ゆっくり電車が動きだした。

窓に視線をずらすと、灰色の雲が浮いている。

今夜は雨になるのだろうか。

場合によっては会社に泊まることになるだろう。そんなことを考えながら携帯電話を取りだし画面を見つめる。

何か文章を書きたいと思ったが、思考は握った砂のようにこぼれていく。

私はなぜ言葉を紡ぐのだろう。

時々それが分からなくなる。

SNSを開き、他人が載せたいくつかの投稿に目を通す。

心に触れたものにボタン押し、それから動画アプリを開いて、何とはなしに眺めはじめた。

男3人と女2人の外国人グループが宮島や厳島を旅行する動画が投稿されていた。

一組の仲睦まじい男女はカップルなのだろうか。互いを見つめる視線の中に深い愛情が含まれている。

それから広島市内を自転車でサイクリングし、笑顔で広島焼きを食べる5人。

原爆ドームに広島城。首を振る宮島の鹿。

今までも、何度か似たような動画で似たような景色は見ただろう。

だが、動画に映る景色はその瞬間にただ一度、そこにしかないと感じ、私の目には涙がたまっていた。

乗り換えるために電車を降り、ホームから階段を登る。

涙で前があまり見えない。

つかまった手すりに、人間という存在の優しさを感じる。

一段一段登る階段に、人間の思いが宿っている。

改札から地上に出ると、太陽がわずかに顔を出している。

肌に感じる風。

何もかもがありがたく、何もかもがいとおしい。

ようやく気づく。

生きること、そのことが直接感謝につながる人もいるだろう。誰かを愛することで感謝につながる人もいるだろう。

私はたまたま書くことを選び、書くことに向かうことで心を動かしそれが感謝になる。

だから、私は日常を書く。