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「第二の家」ブログ|藤沢市の個別指導塾のお話

塾の先生が『さみしい夜にはペンを持て』を子ども達にオススメしたい理由

2023.08.01 12:33


たしか、何処かに残しておいたな。


ある言葉をぼんやりと思い出して、どうにかその言葉を見つけようとiPhoneのメモで検索をかけてみました。おお、やっぱり残ってた。お目当ての言葉に辿り着きました。


写真に無駄な1枚はない。

今ここでパシャッと撮った1枚。
2、3日後に見てもつまらない。

2~3年後に見たら、ああこんなこともあったな
撮っておいて良かったなと思う。

そして、10年後には驚きの1枚になっている。


今改めて調べてみたら、好きなサイトに載っていた『カメラを作る会社のデザインセンター長の方の言葉』でした。カメラにほとんど興味のない私が、なぜこの文章をメモっていたんだろう。頭の片隅から当時のことを引っ張り出してきて思い出してみました。


きっと、「これって写真だけじゃなくて文章にも言えるな」と思ったのでしょう。


その頃からほぼ毎日ブログを書いていた私にとって、この言葉は(元々そういう意図はないにしても)素敵な励ましの言葉になったんだろうと思います。


一生懸命書いたその時はまだ価値がわからない文章でも、時を経て自分にとっての宝物になることがある。私も長い間文章を書いてきて、たとえ自分の書いた拙い文章であっても、「これが残っててよかったな」と思えたことが多々あったのです。


そんなメモを久々に探してみたくなったのは、この本がきっかけでした。



さみしい夜にはペンを持て』という古賀史健さんの本です。古賀さんは『嫌われる勇気』などでも有名ですね。


本のあらすじはこちら。

うみのなか中学校に通うタコジローは、 学校にも居場所がなく、自分のことが大嫌い。ある日、不思議なヤドカリおじさんと出会ったタコジローはその日から、どんどん変わっていく…  


こんな方にオススメです。

□与えられた正解に違和感がある
□自分の考えをうまく言葉にできない
□SNSに疲れてきた
□悩んでいる子どもに何と言葉をかけていいかわからない


この本を一言で表すとするなら、「世界中に溢れているけれど、ほとんど気付かれてもいない『謎』についての物語」でしょうか。うん、よくわからないですよね。だから、もう少し長く書かせてください。


まずこの本、内容はもちろんなんですが、一つ目の視覚情報となる装丁やイラストやレイアウトが素晴らしいんです。本屋さんでもすこぶる目立っていました。インテリアとして飾っておけるぐらいです。


それらと文章とのマッチングも良くて、タイトルが出てきた時には思わず「おおっ」と声を出しそうになりました。読んでいるのに、映画みたいでした。ちょうどスラムダンクやミッションインポッシブルを観た後だったので、山王工業出てきた時やあのテーマ音楽が流れてきた時と同じゾクゾク感を受けました。


本の所々に出てくるギミックも読みやすさを増強してくれています。おかげで一晩で一気に読んじゃいました。さみしい夜じゃなくてもオススメです。


また、途中で出てくる数々の名作へのオマージュが面白いです(ぜひ本書にて確認してみてください)。そういえば冒頭のMAPが『ズッコケ三人組』を思い出してテンション上がりました。年代がバレますね。挟まれる日記も『君たちはどう生きるか』っぽくて重ねながら読み進めました。


上記のこと含めて、これは「中学生が読みやすいように工夫されているな」と強く感じました。中学生が多い当塾としては嬉しい展開です。


それもそのはず。本の紹介文に「『嫌われる勇気』古賀史健による、13歳から読める「自分との人間関係」を構築できる本。一生自分の頭で考え続けたい人へ」とありました。気付かず購入していました。嬉しい誤算というやつです。


さて、ここから内容について触れていきましょう。ただし、ストーリーのネタバレはしませんのでご安心ください。


この本は、迷いや悩みを抱えた子たちが、それを乗り越えるためのガイドブック。そういったモヤモヤとどう向き合えばいいかが物語形式でわかりやすく描かれています。


例えば冒頭、主人公がモヤモヤを言語化して気持ちが楽になる描写があります。


当塾でも、生徒たちが思い悩んでいるとき、よく「紙に書いてごらん」と伝えます。形式とかは気にせず、とにかくそれについて書き殴るのです。たった言語化するだけで、モヤモヤは小さくなり、必要な際は解決策も探しやすくなります。


私たちって本能的に「得体の知れないもの」を怖がったり嫌がったりするんですよね。だから、視覚化してあげれば、怖さや嫌さがなくなる。それだけで向き合う勇気が出る。


こういった生きやすくなる為のヒントを、この本は丁寧に一つ一つ教えてくれます。


本書56ページにある「書くときのぼくたちは『手を動かすこと』が面倒くさいんじゃない。『頭を動かすこと』が面倒くさいんだ」という言葉も、60ページの「悩みを解決するときは筆算するように文章を書く」も、176ページの「『できること』が増えたから、おもしろくなったんだ」も、227ページの「愚痴や悪口は過去形にする」も、そう。


この本は、文章の書き方を通して、変化の激しい世の中をどう自分らしく生きていけばいいのかについて教えてくれます。タイトルや内容から一見この本は文章の書き方についての教科書に見えますが、実は生き方の教科書なのではないでしょうか。


だからこそ、すべての子ども達にオススメしたい本です。このことを知っているだけで、救われたり強くなれたりすることがあると思うから。


最後に、この本を読んでいる間中ずっと、頭の中で鳴っている音楽があったので、それについて紹介をしてみたいと思います。その音は、RADWIMPSさんの『謎謎』という曲です。ちょっと歌詞を覗いてみましょう。


内側からは君にだけしか見えないのに
外からは僕にしか見えないものはなんだ
君からは決して離れようとはしないのに
僕からは平気で離れてくものはなんだ

僕は声に出してしか伝えられないのに
君は口にせずとも話せる人はだれだ
君は生まれた時にはすでに出会ってるのに
僕はやっとこの前出会えたものはなんだ 


こんな風になぞなぞ形式で歌詞が続いていきます。特に好きなのは、ラストスパート部分です。引用がちょっと長くなりますが、読んで欲しいです。


君はそいつを嫌いになってしまったと言う
もう一緒にはいられない 消えてほしいと言う
内側から見たそいつを僕は知らないけど
外から見たそいつならよく知っているから
半分しか知らないままに答えを出すのは
なんかすごくとてもあまりに勿体ないから
外からずっと見てた僕の話を聞いてよ
一番近くにいた僕が見てた 君は

真夜中に架かる虹のように
昼間に輝く星のように
夏に降り注ぐ雪のように
それは それは 新しかった

砂漠で観るシロクマのように
都会で観るオーロラのように
火星で観る生命のように
それは それは 美しかったから


この本を読んで、『世界中に溢れているけれど、ほとんど気付かれてもいない謎』に近付いていく楽しみを知ったあなたなら、きっとさみしい夜には、ペンを持ちたくなると思います。


本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。

きみは、きみのままのきみを、好きでいてあげてね。