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中村鏡とクック25cm望遠鏡

中村要氏製作25cmF3.8反射望遠鏡

2020.07.24 11:38

 中村要氏は、1930年(昭和5)暮れ、生涯最大口径になった25cmF3.8(口径248mm焦点距離947mm)反射鏡を製作しています。これは、以前にもご紹介した、花山天文台の柴田淑次氏の依頼によるものです。ちなみに、柴田淑次氏は、1956年(昭和31)6月5日〜1960年(昭和35)3月20日にかけて、神戸海洋気象台の台長でした。神戸海洋気象台にあった、クック25cm屈折望遠鏡のすぐ近くにおられたことになります。

 木辺氏によると、中村氏は製作に難渋し、3回やり直して仕上げたそうです。この鏡面はマウンティングと共に、後年大阪市立電気科学館へ売却され、カセニュートンタイプに改作されました。副鏡は木辺氏が作製しました。その際、木辺氏は詳しく鏡面をテストされ、中村氏にしては良い作品ではなかったということを述べています。F3.8という深いカーブ面の整型を、中村氏はまだマスターしていなかったようです。中村氏は、20cm鏡を生涯で4面しか製作しませんでした。

 大阪電気科学館へ売却された25cm反射赤道儀は、1945年(昭和20)5月の空襲で消失しました。1枚目の写真左側が、カセニュートンタイプに改作された25cm反射赤道儀、右側は15cmニュートン式反射赤道儀です。2枚目の写真は、25cm反射赤道儀と西村繁次郎氏です。

 この25cmの鏡面は傷つきはしましたが、消失は免れました。それが、リンクでご紹介する後日談です。1949年(昭和24)にこの25cm鏡を入手された松本達二郎氏は、鏡面研磨や火星観測を長くされた方であり、伊達英太郎氏の薫陶を受けられた方でした。

(参考文献)

日本アマチュア天文史,日本アマチュア天文史編纂会,恒星社厚生閣,1987

中村要と反射望遠鏡,冨田良雄・久保田諄著,かもがわ出版,2000

(写真は伊達英太郎氏天文写真帖より)