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日々の嫉み

妄想劇場 42

2018.07.30 11:42


(こちらは完全に妄想の物語です。

実在の人物や関係者とは全く関わりありません。)





打ち上げ 2






かおるさん…まだかな。


店内には見知った顔がそれぞれ楽しそうに談笑している。

輪に入れない訳ではないけど、乗り切れてない所もある。源ちゃーん!とか言われて来たら適当にノンアルコールを掲げて飲み込む。


ロビーで合流してタクシーに別れて乗り込み全部同じ行き先に向かった。

いつも打ち上げで行くバー。亮ちゃんの行きつけ。

割といつでも開いてるので重宝している。

今夜も貸し切りにしてもらった。



「源ちゃん。そんな入口ばっかりチラチラ見てないの。来てくれるんだからさ。」



小声で話しかけてきた。

ほんとに目ざといよね。さっきまで楽しそうに喋ってたのに。



どこ見てんのよー。


「源ちゃん。バレバレ。」


隠してるつもりも無いからねぇ。


「堂々としてんじゃん。それでいいのよ?」


ん。ありがとー。



店の空気が冷たくなった。

見るとドアが開いて雪女が立っている。

と。石田くん。



「かおるさーん!待ってましたー!」



亮ちゃんの第一声でみんながそっちの方を見た。

ふわっと笑ってお待たせしました。って。

オレは…雪女の運んできた冷たい空気を吸い込んだ。



「では改めて。源ちゃん!乾杯の音頭!」


え?オレ?


「ったりまえでしょ!」


コホン。

それでは皆様。



集まった仲間たちから笑いが漏れる。



昨年は本当にお世話になりました。

今年もたぶんかなりお世話になる予定です!

よろしくお願いします!

かおるさん!紅白とCDTVと!ありがとうございました!

かんぱーい!


「かんぱーい!!!!」



ノンアルコールビールを掲げる。

かおるさんは普通のビール。

みんなも各々自分の持ってるドリンクを掲げた。

そこからは談笑タイム。

食べ物をつまんだり、飲んだり。

石田くんは車の運転があるからとノンアルを飲んでる。

しばらくして石田くんが近ずいて来た。



「星野さん、明日は10時に迎えに行きますからね。

宿泊の準備お願いしますね。」


はーい。


「かおるさん…だいぶ飲んでますけど大丈夫ですかねぇ」


え?


「ほら。あそこ。」



石田くんが指さす方向にかおるさんが何杯目かのビールを飲んでる姿。

誰が飲ましてるわけでもなさそうだけど。


かおるさんやっぱ強いんじゃん。顔に全然出てない。


「ですねぇ」


石田くんもう帰るの?


「はい。帰って準備もしたいので。」


お正月ゆっくりさせてあげれなくてごめんね?


「何を言い出すんですか。」


全国行脚がんばろーねー。


「はい。では、お先に失礼しますね」


お疲れさま。


「星野さん。送り狼はダメですから。」


ふははっ。そんなことにならないでしょ。



石田くんが笑って帰っていった。

それを皮切りに1人、また1人と席を立つ。

そこそこ遅い時間だしね。

オレもボチボチ…



「かおるさん?おーい。かおるさーん」


あれ。どしたの?


「源ちゃん。かおるさん寝ちゃった。」


え?寝たの?


「さっきまで結構ペースよく飲んで喋ってたんだけどね?突然寝た。」



楽しそうにしてたからあえて邪魔はしなかった。

ミオさんとアヤメちゃんと楽しそうに喋ってたし。

たまに亮ちゃんがちょっかい出してるのをはたから見て一緒に笑ってた。



うーん。寝ちゃったのか。どうしよ。


「源ちゃん、かおるさんの家知らないの?」



知ってる…けど知ってるなんて言えるか。

行ったことあるなんて口が裂けても言えないよね。

まだ。

言えたとしてもそれこそ送り狼じゃないか。



かおるさーん。かおるさん?

起きて?歩ける?帰るよ?


「…はい。なんとか…」


タクシー呼んで?オレ送ってから帰るわ。


「はーい」



展開的にはまずいヤツですよね…

絶対やっちゃダメなパターン。

しかも隠れ岩戸の住所よく知らない。

帰って準備もあるから送り狼は出来ない。

んー。どうすっかな…。



「源ちゃん。タクシー来たよ」


ありがとー。かおるさん?行くよー?


「はーい…」



半分夢の中なかおるさんの肩を持ち上げる。

なんでこうなるまで飲んだの…



「すきっ腹に飲んじゃったみたいだねぇ」


なるほどね…



いつもは人の世話にはならないであろうかおるさんが。足元ふわふわで。酒臭くて。

それでもほっとけない。

タクシーに乗り込んで。オレは自分の部屋のあるマンションの住所を運転手に伝えた。

あのバーからは距離的にオレの部屋が一番近いし。


準備もしなきゃだし。

早く寝たいし。

言い訳をいっぱい作ってかおるさんをうちに連れ込む理由を正当化する。

オレの肩に頭を乗せた状態ですぅすぅと寝息をたてる彼女。

もー。無防備そのものなのに。鉄壁の雪女武装が立ちはだかる。

どーすんの。これ。

そんなこんな考えてたらあっという間に着いてしまった。

はぁー。と大きなため息が思わず漏れる。



かおるさん?着いたよ。歩ける?


「ん。あ。はい。あるけまふ。」


ふははっ。


「なにか?」


酔ってんなぁと思って。


「よっぱらってなんか。」


はいはい。行くよ。



腕を掴んで。荷物二人分持って。エレベーターに乗り込む。

その間もずっとかおるさんの頭はオレの肩の上。



まだ寝ちゃダメよ?


「んー。」


かおるさーん?お願いだからー?


「ふぁーい。」



ポーン。

エレベーターが到着を知らせる。



かおるさん?もう少し頑張って歩いて?


「ん。」



ふらふら。ふらふら。

やっと自分の部屋のドアの前に立つ。

鍵。かぎ。

ドアを開けて入る。



ほら。それ脱いで?



草履を脱いでもらいなんとか部屋の中に入れる。

とりあえず…ベッドにでも寝かしとくか。

寝室のドアを開けて。

なんとかかんとかコートを脱がす。

雪女武装はそのまま?

脱がし方わかんないし。とりあえずいいや。

かおるさんをベットに寝かせた。



「ん。いー匂いー。」


すぅすぅ。



寝付き早っ!

普通この時点で覚醒するんじゃないの?

疲れてたのね。

オレのベッドに。好きな人が寝てる。

最近なかったシチュエーションだけど。

なにもしてない状態でしかも鉄壁の武装した状態で泥酔してて寝てるってのは無かったなぁ…。



はぁー。

何やってんだ…



とりあえず気を紛らわすために明日からの準備でもしよう。

寝室の扉を少しだけ開けたままにして部屋を出た。


準備を終えて。

と言っても3日分の下着と私服をトランクに詰め込んだだけだけど。

寝ようかなどうしよ。と思って寝室を覗いて見たら。

グレーの着物着てたはずの雪女が真っ黒になってた。

床には脱ぎ散らかした跡がある。

どゆこと?しんどかったから自分で脱いじゃったの?



かおるさん?

起きてんの?


すぅすぅ。



んー。無防備過ぎてビビる。

熟睡なの?



もしもーし?


すぅすぅ。


ふははっ。



笑うしかない。

オレも寝よう。

隣で寝ても大丈夫かな…氷漬けにされたりしないかな?

規則正しい寝息をたてる真っ黒な雪女の隣に寝転がる。頭を撫でてみる。

ほっぺたを引っ張ってみる。



「ん。いひゃいー。」


んふ。かわい。



それでも起きないから。

顔を近づけて。唇を少しだけ重ねてみた。

おやすみのキスをして顔を離すとふわっと笑った気がした。

ほんとに寝てんの?

しばらくその寝顔を眺めていた。

気づいたらオレも夢の中へと旅立っていた。