サプライチェーンにみる落とし穴と可能性
中国の工場に呼ばれてまず驚いたのはその規模感である。
なにしろデカイし広い。軽く街。
生地部門から縫製部門への移動は同敷地内なのに車移動。まぁ歩けるとは思うけどお客さんってことでそういう待遇を受けたのかもしれない。
今の日本の製造業を簡潔にまとめるとこんな感じ↓
OEM一貫で受けてるメーカーもあるけど、自社内に生地を作って縫製まで仕上げるという機構は商業的には有り得ても工業的には存在しない。結局のところ水平分業である。
呼ばれて行ってきたその中国の工場はこんな感じ↓
糸さえ手に入れば編み機から染色機、裁断から縫製、仕上げ全ての工業的設備が整っている。工業の垂直統合である。
水平分業も垂直統合もそれぞれに一般的に言われているメリットやデメリットがある。
だけど今の繊維製造業は日本の水平分業スタイルだと結構しんどい。
生地を編むニッターにしても、染める染色工場にしても「日本のモノづくり」を旗印に各社しのぎを削り、高付加価値の商品を企画されている。
売上が伸び悩んでいるこの業界に於いては至極真っ当な作戦に見えるがそこが「落とし穴」だという事に気づいていない。
「日本のモノづくり」を、どのようなターゲットに届けたいか明確ではないからだ。
工業としては設備が存在する以上、稼働をさせなければならないと考えている工場がほとんど。規模が大きい程に製造ロットを確保したくなる。
ところが加工単価は「高付加価値」なので通常の加工賃より高い。
製品単価が上がれば、その価値を求める人たちが一体どれくらいの数世の中に存在しているのか把握する必要がある。
そこに大きなギャップがある。
少なくとも日本国内においては、既に海外生産の商品が安価で高品質なのはベースになっている。
「海島綿を使い極細番手を紡ぎ、スーパーハイゲージで編まれ綿とは思えない様な艶を産み出す加工を施した出来ること全部モリモリの素材を使ってTシャツ作りました¥20,000です!」をやって許される市場はとてもマイノリティ。
しかもこれらを価値観という誰が決めたか知らない価値を定義して売り場に投入するためにあの手この手を尽くしている中間業務の諸兄が、一番マージンを欲しがるから困る。
この中国の一貫工場を見て確信した。
工業レベルの製造業は、この規模が海外にあるならマスへの供給面ではもう勝ち目はない。
日本国内にその機構を作り上げることができたならもしかしたらもしかするかもしれない。
高付加価値を押し付けがましい製造ロットに乗せようとしてくる工業の意識が変われば、その高付加価値も意味を持つ。
そういう可能性を見据えて小規模ではあるが僕は取り組んでやっているところである。