犬に多い皮膚の病気『角化症』とは?
「角化症(かくかしょう)」とは、皮膚の表面にある角質が正常に作られなくなっている状態をまとめて角化症と呼んでいます。私達の肘やかかとが硬くガサガサになるのも、角化症の一つです。
この「角化症」というのは犬の皮膚病の中でもとても多い病気です。犬の皮膚病を複雑に治りにくくさせているのがこの角化症だと言えるかもしれません。
今回は、その角化症がどんなときに起きるのか、どんな状態になるのか、お家での対処方法などについてお話していきたいと思います。
角化症の症状
角化症の症状は以下の4つに分けられます。
1、皮膚が乾燥してガサガサしている
2、フケが多い
3、洗ってもすぐベタベタになる
4、細かい皺が深くなって象の皮膚の様に硬く厚ぼったくなる。
上記の一つしか症状が出ないこともあれば、複数組み合わさって症状が出ることもあります。
角化症ってどんな状態?
皮膚の一番表面を角質といいます。角質は、角質細胞が薄いパイ生地が折り重なり層のような状態に積みあがってできています。化粧品のCMなどで見たことがあるかもしれませんね。
角質の層の内側には表皮の層があります。表皮層の一番内側の層(基底層)から細胞は順に姿や働きを変えながら表面に移動してきて、最後に薄く平たくなって硬くなり角質細胞になります。
角質細胞は一番外側から少しずつ目立たない程度に剥がれていきます。
正常では基底層~角質が剥がれるまでのサイクルは20日程ですが、角化症ではこのサイクルが4~5倍にまで早くなってしまっています。このスピードに細胞の変化が追いつかず、角質の細胞と細胞の間のつながりが弱くて剥がれやすくなったり、スカスカして水分がうまく保てないような構造になってしまいます。
表皮の層はかなり分厚くなり、角質の層も厚くなっています。皮膚の層はどんどん作っているのにちゃんと機能できていない、そんな状態が角化症なのです。
角質は本来硬くてある程度しっかり連結していて、外から寄生虫や細菌が侵入してくるのを防いだり、表皮の水分が外に逃げるのを防いで皮膚の水分を保つ働きをしています。角化症になってしまうと、乾燥による痒み、細菌感染、アレルゲンが侵入しやすくなるなど、皮膚病を悪化させてしまいます。
角化症の症状、皮膚のガサガサとベタベタが同時に起きているのは毛の根元の方にある皮脂腺(脂腺)の分泌が角化症に伴って亢進した状態です。これを脂漏症といいます。
ベタベタのときはその皮脂をエサとして、皮膚常在のマラセチアと呼ばれる酵母菌の一種が増殖して、角化症を悪化させていることが多く見られます。
角化症の原因は?
角化症は生まれつきの病気で起きてくる場合と、他の皮膚病に伴って二次的に起きてくる場合があります。一般的には他の皮膚病に伴って起きる場合がほとんどです。
皮膚病の中で一番多い膿皮症やアトピー、食餌性アレルギーでも角化症が同時に起きてきます。特に長く経過している(慢性化している)皮膚病に多いのが特徴です。
角化症を改善するには
病気の治療は原因を見つけて診断をつけて必要な薬を使うのが大事です。それは皮膚病でも同じなのですが、ことに角化症においては対症療法のスキンケアこそがとても大事な役割を果たします。
なぜなら二次的に起きてしまった角化症自体が、痒みをひどくしたり、アレルゲンや細菌の進入をしやすくしたりするなど、皮膚病を悪化させる原因の一つになってしまうからです。
体が皮膚病を治しやすくなるように、スキンケアで助けてあげましょう。
具体的なスキンケアの方法は、シャンプー療法です。皮膚の状態に合わせたシャンプー剤を選びましょう。
●フケが多い時
余分なフケをよく落とし、フケの産生を調整するシャンプーを使いましょう。イオウ系がよく使われます。
●ガサガサするとき
保湿性のあるシャンプーを使います。セラミドなど保湿成分を含んだシャンプーなどがあります。
●痒みがひどいとき
保湿性と痒み止め効果を合わせ持つシャンプーを使いましょう。
●細菌感染もあるとき
保湿性と抗菌性を備えたシャンプーを使いましょう。
●ベタベタしている
抗脂漏性のシャンプーを使いましょう。
シャンプー選びに迷う時には、獣医師のアドバイスのもと選ぶようにしましょう。
また、シャンプーが合っていないと感じたとき(症状が悪化したときやなかなか改善しないとき)も、種類や頻度について獣医師に相談しましょう。
おわりに
愛犬の皮膚がベタベタしたりガサガサしていても「そういう肌質なのかも」と思っていたら、実は角化症で改善できる場合もあります。痒みは大きなストレスになりますし、ベタベタは衛生面でもあまり良くありません。
皮膚は内臓と違って治療効果が目で見て分かるので、飼い主さんも治療に参加しやすい病気だと思います。すぐに効果が出るわけではないので長い目で見た治療が必要になりますが、すべすべしっとりの健康的な皮膚に少しずつ近づけていきましょう。