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紅く色づく季節

優しい貴女を甘やかす方法

2023.08.08 13:04

【詳細】*こちらのシナリオは女性同士の恋が書かれているシナリオでございます

比率:女2

現代・ラブストーリー

時間:約10分


【あらすじ】

「今日は家に来ないで」

恋人から入った突然のメッセージ。

いつもとは違う文面に違和感を覚え茉莉は智美の部屋へと向かう。

そこにいたのは毛布にくるまりソファーに座る智美だった。


*こちらのシナリオは、『優しい君を甘やかす方法』の女性二人版になっております。



【登場人物】

茉莉:(まり)

   20代。


智美:(さとみ)

   20代。

   



●智美の部屋・夜

   電気が消えて真っ暗な部屋。

   ソファがあり、智美が毛布にくるまって座っている。

   玄関が開き、茉莉が帰ってくる。


智美:……っ……

茉莉:(小さな声で)お邪魔しま~す。うわっ、暗っ! 電気、電気……

   (電気をつける)よし……

   (ソファの智美に気が付き)うわっ! 智美、こっちの部屋にいたの?

智美:……

茉莉:てっきり、寝室にいるかと思った

智美:……ごめん……

茉莉:いや、私の方こそ、急に部屋の電気つけちゃってごめん

智美:……ううん、大丈夫……

茉莉:……

智美:……

茉莉:それで?

智美:え?

茉莉:どうしたの?

智美:えっと……何が?

茉莉:急に、「ごめん、今日は家に来ないで」とか、びっくりするじゃん

智美:……あぁ、ごめん……ちょっと具合悪くて……

茉莉:……

智美:茉莉に迷惑かけるの嫌だし、何かあってうつすのもよくないなって思ったからさ……

茉莉:ふ~ん?

智美:……だから、来ないでって言ったの

茉莉:なるほどね

智美:だから、帰って……

茉莉:(遮って)じゃあ、とりあえず、智美はベットに行ってて

智美:え?

茉莉:確か、お米はあったよね。卵はこないだ二人で買い物行って買ってきたし

智美:ねぇ……

茉莉:他には何か食材ってあったけ? あぁ、でも、いつも二日三日分くらいの献立しか考えないで買い物するからなぁ。期待は出来ないか

智美:ねぇ!

茉莉:ん?

智美:……私、具合悪いって言ったよね?

茉莉:言ったね

智美:帰ってって言ったよね?

茉莉:言ったね

智美:なら……

茉莉:帰らないよ。このまま放っておいたら、智美はご飯食べなさそうだからダメ。食べなかったら、治るもんも治らんでしょ? だから、智美はさっさとベットに行った行った

智美:(背中を押されて)ちょっ!

茉莉:どうせ昨日の夜から何も食べてないんでしょ?

智美:ねぇってば!

茉莉:だから何?

智美:だから!

茉莉:本当に帰ってほしいの?

智美:……え?

茉莉:本当に帰ってほしい?

智美:……うん……

茉莉:(ため息)

智美:……っ……

茉莉:ばーか。もう!


   茉莉、ソファーに座る智美を抱きしめる。


智美:……え?

茉莉:私に嘘つくなんて100年早い

智美:え?

茉莉:智美、風邪なんてひいてないんでしょ?

智美:……

茉莉:バレバレだよ。風邪ひいてるのに声はふつう、鼻水も出てない、だるそうでもないし、熱もなさそう。しかも、こんなソファーの上で毛布にくるまって座ってるなんて……本当に風邪ひいてたら、智美はそんなことしないでしょ?

智美:そんなこと……

茉莉:それに、風邪ひいたなら風邪ひいたって智美はちゃんと言う。「今日は家に来ないで」なんて連絡の仕方してこない

智美:……

茉莉:私には嘘は通用しないよ

智美:……なんで……

茉莉:そりゃ、智美のことずっと見てたからわかる。で? 本当に帰ってほしい?

智美:……

茉莉:智美が本当に一人になりたくて、帰ってほしいなら、私は帰るよ。誰かが傍にいる方が今は辛いってことだってあるだろし。でも、傍にいてほしいって思ってくれるなら傍にいる。どうする?

智美:……っ……(弱弱しく茉莉の服の裾を掴む)

茉莉:ん、じゃあ、一緒にいる。よし、じゃあ、とりあえずご飯を……

智美:(遮って)やだ

茉莉:え?

智美:やだ……

茉莉:えっと、智美? 放してくれないと何もできないんだけど…

智美:やだ

茉莉:ちょ、ちょっと? 急にキャラ変わってるよ?

智美:嫌だ

茉莉:(苦笑して)もう、仕方ないな……

智美:……茉莉?

茉莉:なに?

智美:……ありがとう……

茉莉:いいえ、どういたしまして

智美:……あのね……ちょっと、不安になっちゃってね……

茉莉:うん

智美:……何がって具体的にあるわけじゃないんだけど……たまにこうなっちゃうんだ……

茉莉:そっか

智美:……ごめんなさい……

茉莉:なんで謝るの?

智美:……結局迷惑かけた…

茉莉:ばか

智美:え?

茉莉:迷惑だなんて思わない。むしろ、嬉しいよ

智美:嬉しい?

茉莉:そ、嬉しい。智美はいつも優しいし、気遣いしすぎなの。たまには、甘えてきなさいな

智美:ダメ……甘えすぎちゃうから……

茉莉:(優しく微笑んで)そこは大丈夫でしょ

智美:え?

茉莉:確かに、私が忙しいときとかに「辛い」とか「かまって」って気持ちの押しつけをしてきたら、そりゃ迷惑だって思うだろうけど。智美はそんなことしない。そういう人じゃないって私は知ってるから

智美:……うん……

茉莉:だから、迷惑とか思わない。それに、無条件に甘えられるのは恋人の特権でしょ? 違いますか?

智美:……うん……

茉莉:わかればよろしい

智美:……ありがとう……

茉莉:うん

智美:(嬉しそうに微笑む)

茉莉:よかった

智美:え?

茉莉:表情、やわらかくなった

智美:うん……

茉莉:あ~ぁ、もう、ダメだ~

智美:え?

茉莉:智美、やっぱり一緒に住もう

智美:え?

茉莉:朝も昼も夜もずっと一緒にいて

智美:茉莉……

茉莉:それで、いっぱい甘やかしたい

智美:……それは……

茉莉:ダメ?

智美:……ダメ

茉莉:(苦笑して)そっか

智美:すぐには無理だよ……いろいろしなきゃでしょ?

茉莉:っ! もう!


   茉莉、智美をギュッと抱きしめる。


茉莉:じゃあ、次の休みは一緒に家探そう

智美:うん……

茉莉:……今日は泊って行ってもいい?

智美:うん

茉莉:智美

智美:なに?

茉莉:愛してる


   優しくキスをする。



―幕―




2023.08.08 HP投稿