「古志」深川句会(8月)を終えて 2
昨日の続きです。
特選句から、いくつかご紹介します。
(蜻蛉 Photo by Arnelle Balane)
老の指回せばとんぼ素直なり 西川東久
とんぼの目の前で指をくるくる回して、
目が回ったところを捕まえるわけですが、
年の功か、作者の指には素直に目を回してくれる。
幼いお孫さんがおなじように試みても、
なかなかうまくいかない。
そんな姿がうかがえ、
微笑ましい句になっています。
素直に目を回すとんぼの姿もおかしくもあわれです。
夕されば茂吉の蚊帳も蚊帳の果 長野いづみ
〈蚊帳のなかに放ちし蛍夕さればおのれ光りて飛びそめにけり〉。
斎藤茂吉の短歌を踏まえています。
蛍を放ったあの蚊帳もいまは秋になったというのです。
〈蚊帳の果〉は〈秋の蚊帳〉の傍題。響きがあわれです。
(蚊 Photo by Wolfgang Hasselmann)
牛車去る蚊帳の名残りをいつまでも 大場梅子
作者は『源氏物語』の世界を意識したとのこと。
王朝時代は通い婚でしたので、
男性が女性の邸宅で一夜をともにした後、
夜が明ける前に、牛車に乗って帰っていくわけですが、
そのときの名残惜しい心情をこの句は描いています。
〈名残り〉が掛詞のように蚊帳と恋の二つに掛かっています。
現代の俳句ではあまり掛詞は使われませんが、
この句は効果的かつ自然に使われていると思います。
ちなみに蕪村の句に〈蚊帳の内に朧月夜の内侍哉〉がありますが、
こちらも『源氏物語』を詠んだ蚊帳の句です。
「古志」深川句会は毎月第2水曜日に開催しています。
次回は9月13日(水)13:30〜
会場は江東区森下文化センターです。「のらくろ館」が併設されています。
「古志」の会員の方はどなたでもご参加いただけます。
初心者の方も歓迎いたします。
ぜひお越しください。
入会ご希望の方は「古志」公式サイトまでお問い合わせください。