【中編】より良い排泄を行うために!DASUケアの概念と実践
平成30年度の介護報酬改定で、4月から「排せつ支援加算」がスタートしました。いま、“排泄をどのように看ていくか?”は、これまで以上に注目されています。
より良い排泄ケアを実現するための本コラム、第2回は大関 美里 先生が考える「排泄ケアの成功のための第一歩」をお話いただきます。
何気なく毎にち繰り返している行為というと、食事や睡眠がありますが、そこには「何を食べるか」「何時に寝るか」といった選択思考が入ってくるはずです。「排泄」はそういった思考が入る余地の少ない生理的欲求としておこなわれています。生きているかぎり繰り返すこの行為は、あまりに日常的におこなわれるために、どうしてもセラピスト自身の価値観が色濃く出てしまう領域だと感じます。
私たち社会生活を送る者のほとんどは、自立排泄を獲得しているはずです。それは解剖的に正常な機能が保たれている状態のみを指すものではありません。
ストーマを使っていても、パッドを使っていても、社会的に問題がなく、活動の制限が克服できているならば、「ソーシャル・コンチネンス(排泄の社会的自立)」(クリストン・ノートン)は保たれていると言えます。これが保たれていれば、「何でもない毎日」を送ることができるのです。
特に高齢者への対応となると、排泄の不都合はケアする側からの視点に立った「おむつ交換」や「トイレ誘導」など、目だって表出してくる問題への対処に目が向きやすく、その部分へのアプローチに終始してしまうケースも珍しくありません。
失禁の改善など、課題解決そのものが目的になりがちですが、本当の目的は、毎日の暮らしの中で「ソーシャル・コンチネンスの状態に近付ける」ことです。
ケアの成功は、まず初めにこの目的を、チームで共有できるか否かにかかっています。
排泄は隠された行為のため、個人個人の価値観の違いがあらわれやすく、「この方にとっての最善」と思って打ち出したケア方針にズレが生じることがあります。
「誰が、どう感じている問題なのか」を挙げて、その上で「この方にとっての最善」を考えていくことが、より良い排泄ケアの第一歩となるでしょう。
「排泄の不都合がその方のQOLを低下させ、自尊心を損なうキッカケになる」という言葉があります。
私も知識としては知っていましたし、想像もできましたが、実感をもって言葉を理解するには至らず、実際に自分がおむつ内排泄を体験するまでは三人称視点での認識のままでした。
そのようなギャップを解消するために、排泄の不都合や排泄用品の不適合が食事・睡眠・不良姿勢・意欲の低下に繋がるということを、事前にチーム内で情報共有し、総合的に検討していく必要があります。
(次回に続く)
(文責:DASUケアLAB代表・DASUケアコーディネーター、介護福祉士、社会福祉士、認定排泄ケア専門員(コンチネンスリーダー)大関 美里)