Stop your sobbin
2014 3 11
阪神大震災被災者です。
若かったことや神戸に家族、親せきがいなかったこともあり
震災後3年めあたりのことはほとんど覚えていませんが、ひとつだけ。
阪急梅田駅、三宮行きの出発待ちの電車で80歳くらいの上品なおばあちゃんが
満面の笑みで話しかけてきた。
「失礼ですけど、あなたは、地震のとき神戸にいらした?」
「あ、はい。東灘区にいました」
おばあちゃんは神戸に住んでいたけども、アパートが住めない状況になったために
ひとまず大阪の仮設で暮らし始めて、そのまま前に住んでいた場所に戻れないのだ
ということや、前はたくさんいたお友達が近くにいない、その人たちもばらばらに
なってしまい、元気かどうかもわからない、大阪の人とは震災の話しもできなくてね、と終始笑顔を絶やさ ずに私に話した。
そして「ごめんなさいね」と会釈して席をたち、ちょこちょことまたななめ前くらいの
乗客のところに行って、「失礼ですけどあなたは、地震の時神戸にいらした?」と話しかけ
ていた。
そのサラリーマンが首を振るとまたいくつか離れた席の乗客に話しかけていた。
出発のベルが鳴ると彼女はまたちょこちょこと慌てて電車を降り、電車が出発する時は、
ホームにぼうっとうつろに立っていた。
東日本大震災から3年目。ただ駅に来て、三宮行きの出発待ちの電車に乗り込み、
控え目ではあるけれど必死さが伝わる笑顔で自分の境遇に共感できる人を探して、
そしてまたベルが鳴ると電車から降りて、ホームに戻っていく、
彼女のようなよるべない心のままの人が、大勢いるだろうということだけしか、
私には分からない。
東日本大震災の被災者の方々のここからの寂しさを思った。
今日の1日に阪急電車のあずき色と黄緑色の座席のもわっとした温度がついてまわった。