惜別 ジェイミー・リード
英国のアーティスト、ジェイミー・リードが亡くなった。76歳。家族がSNSを通じて発表した(英国時間8月8日)。
47年ロンドン生まれ。76年から78年にかけて、セックス・ピストルズのレコードジャケットやライヴフライヤーを手掛けたことで知られる。
切り張りコラージュを得意とした。新聞紙から一文字づつレターを切り抜いて脅迫状のようなロゴを作ったり、女王陛下の肖像画に安全ピンを突き刺したり。リードのアイディアの多くはのちにパンクのみならずポップアートのセオリーとなった。
もっとも日本ではピストルズ活動当時、リードに関する情報は何も入って来ず、名前さえ誰も知らなかった。87年に刊行された作品集”Up They Rise“でアートワークの全貌に触れ衝撃を受けた人は少なくない。
89年には東京、大阪のパルコで作品展が開催。大阪のパンクスポットではどこもこの話題で持ち切りだった。フロアを何周もして作品を目に焼き付けた。ライヴフライヤーの原画など、あとで考えると破格のプライスで売りに出されていたことを今もなぜか悔しさ紛れに思い出す。
昨夜から今日にかけて。facebookをはじめ各SNSにリードの作品がこれでもかと現れる。パロディも数多く、衰えぬ影響力のほどがうかがえる。
宇部市のポップアーティストkozi69は数年前、非公開作品のなかでリードにオマージュを捧げた。kozi69らしいすっとぼけたテイストに我々は大いに笑った。
“GOD SAVE THE QUEEN”のTシャツを親子二代で着続けた母と娘を知っている。ただのファッションアイコンに染まることのない強い意思表明をそこに見る。ジェイミー・リードとはそうしたアートだった。
ピストルズのプロジェクトにリードを誘い入れたマルコム・マクラーレンは2010年に死去。マクラーレンの公私のパートナーでピストルズのステージ衣装ともなった”SEX/SEDITIONARIES“を創造したヴィヴィアン・ウエストウッドも昨年末に亡くなった。なんとも言えぬ寂しさに襲われる。と同時に、セックスピストルズの破格のかっこよさはこの三人によってもたらされたことを再認識する。
リードがもしもいなかったらーー。”NEVER MIND THE BOLLOCKS”のアートワークをいったい誰が手掛けただろうか。確信を持って言えるのは、ずいぶんとつまらないものになっていたということ。ジェイミー・リードの功績を讃えたい。
文・奥瀧隆志
※8月11日にFacebook/instagramにポストしたものを加筆しました。