FROM桑名石取祭『NINL』vol.15 「提灯のお話」
石取祭は夜の祭です。
少し前vol.12で「祭車の灯り」のお話をしました。
その中にも “提灯” が登場しましたが、実は祭車の他にも色いろな種類の “提灯” があるんです。
中で一番重要なのが、祭事長が持つこの “役提灯” です。
祭事長は祭車の前に立ち、この提灯を上げ下ろしして合図を送り、祭車を進めたり止めたりします。(“進め” や “止まれ” という動作の切り替えに提灯を上げる)
“采配”のようなものですね。
よって、私たちにとっては重要なものですが、見学の方の印象は、圧倒的に祭車の万灯や十二張ですよね。
この提灯は、通常のもの と 雨用の油提灯の2種類があります(vol.13でも少しふれています)。
右の白っぽいのが通常のもの。左が雨用の油提灯。
油提灯には傘がついています。
雨除けの傘、こうして比べてみると傘がちょっと可愛らしく見えます。
写真右側の大きな提灯が十二張用。 左の小さい方が天幕用です。
不燃剤とかではないので、風でバタついて中のロウソクが倒れると普通に燃えます(笑)。
ですから予備も備えています。
そして、これが↓万灯です。
中がこんなふうに取り出せて、
雨用の油の方と交換できます。
万灯には小窓があって、そこを開いて蝋燭を交換します。
万灯の中はこんな蝋燭台があります。
写真の白いところが小窓部分です。
この面に「町内安全」と「天下泰平」と春日町の祈願を記していますが、これは町によってそれぞれですね。
そして、こちらが「御幣(ゴヘイ)」。
万灯の上につけます。
こんな提灯に付随した “小さな仕掛け” がこちら。
祭車のサイド、一見普通に見えますが、、、
引出しになっています。
役提灯の蝋燭などを入れて備えています。
さて、こんなふうに準備万端にむかえる祭当日。
天気が悪い場合や、悪くなるのが明らかな場合は、最初から油提灯で出ることもあるのですが、問題なのが途中で天気が怪しくなってきた時です(このあたりもvol.13で取りあげています)。
この場合、祭事長が「そのままにする」か「油提灯に交換する」か、の判断をするのですが、一旦交換の判断が出ると一気に慌しくなります(大わらわ)。
普通の提灯は雨で濡れると壊れてしまうので、山形によじ登ったりして速やかに交換作業を行います(雨対策についてはvol.13を!)。
私たちにとっては大変な作業ですが、見学の方にはこれも見どころの一つでしょうね。
もう一つ提灯をご紹介します。
子供たちが持つ「弓張提灯」です。
岡っ引きが “御用だ御用だ” で持っているアレで有名でしょうか(笑)。
この形の提灯を使っているところは珍しいようです。
叩出しの日の夕暮、子供たちはこの提灯を持って “おかっつあん” にいきます。
持ちやすいし、ちょっと小粋でしょ。
こんな様々な提灯もぜひ楽しんでくださいね。
案内人:春日町副祭事長 堀田大介
【提灯豆知識】
<伝馬町の十二張>には提灯の中に “オモリ” が仕込んであり、よって伝馬町の十二張は他と比べると長く見える。=by 市岡恒明=