《今後の方針》 動物擁護とフェミニズム
拙著をお読みくださっている皆さま、ご支援をしてくださっている皆さま、平素は格別のお引き立てを賜り、厚くお礼申し上げます。
さて、これまで私は動物擁護の関連書籍を翻訳・執筆することに専心してまいりましたが、今後はそれに加え、フェミニズムの文献を紹介していこうとの決意を固めました。来年(2024年)以降、性売買のテーマを中心に、性搾取や性差別との闘いを支える関連書を刊行していく予定です。立て続けにフェミニズムの文献を発表する時期があるかもしれませんが、動物擁護の仕事と両立させたいと考えております。
方針転換の動機はいくつかありますが、とりわけ性売買のサバイバーである人々が声を聞かれない、それどころか積極的に声を封じられている状況に大変な理不尽さを感じ、当事者運動や当事者支援運動のエンパワメントに貢献したいと思ったのが大きなきっかけです。男性という非当事者の立場から自分に何ができるか、ヒロイズムに陥らない連帯の仕方としてどのような取り組みがありうるか――構造的な非対称がある中での「連帯」がそもそも可能であるとして――を考えた結果、この専門技能を活かし、当事者やその支援者の人々の力になりうる資料を紹介していくことが私の役目であろうとの思いに至りました。
多くのビーガンが認識しているように、性差別と動物支配、フェミニズムと動物擁護には深いつながりがあり、私の中でもこの両テーマは切っても切れない関係にあります。したがって、動物擁護に投じてきた力をフェミニズムに投じることがマイナスであるとは考えません。むしろそれは私が支持してきた領域横断的な正義、単一争点を脱した解放運動の実践だと認識しております。また、これにともない、動物擁護の仕事においても、今後、顧みられてこなかったフェミニズム系の議論を重点的に紹介していければと考えている次第です。
これまで私の活動を支えてくださっていた皆さまに、ぜひ上の事情をご理解いただければと願っております。そして拙著の読者である皆さまは、きっと理解してくださるはずだと確信しております。今後ともなにとぞ、井上太一の仕事をよろしくお願い申し上げます。