8月2日 青森市浪岡→青森市街(25km)
居心地の良かった道の駅「なみおか」を出発。
昨日の予約の通り、青森市街のホンダカーズに行き、キャンピングカーの車体の錆止め処理を依頼する。
処理は2種類あり、床面の表面に錆止め材を塗布する「スリーラスター」と、オプションで車体の中空部位に塗布する「ソルトガード」で、合計10万円弱(5年保証)かかってしまう。
かなりの出費だが、普段手入れができない車体部分が錆びてしまうよりはマシなので我慢する。
新青森駅のカフェで軽い昼食。
三内丸山遺跡方面へのバスの時間待ちをする。
夏の間運行される臨時バス「ねぶたん」は本数が少なく、しかも6mほどのコミュニティバスのサイズなので、当初乗るはずだったバスは最初に並んでいた3人しか乗れず、我々は一本遅らせることになる。
待ちきれず乗合でタクシーを使う人もいた。三内丸山遺跡の一つ手前の県立美術館で下車。
この美術館は白を基調とした建物で、睨みつけるような視線の少女の絵が国内外で有名な、奈良美智のオブジェ「あおもり犬」があまりにも有名だ。
個人的には、彼の作品はあまり心に響かなかった。
それでも、それ以外の青森県出身の芸術家の作品は印象に残るものが少なくなかった。
まず棟方志功。
日本を代表する版画家である彼の作品は、版画よりも水彩画の展示が多かったが、彼の特徴である絢爛かつ上品な色彩は、彼が幼少から親しんだ、ねぶたの影響を強く受けていることが体感できる。
彼の水墨画的な作品は中国の精密さは無いものの、独特の力強さがある。
版画は「版画新日本百景」のうち、国会議事堂や天橋立を題材にした一部の作品が展示されている。
強度の近視だった棟方は、版木に顔を埋めるようにして、荒削りで伸びやかな線を生み出している。
なお、今回は行かなかったが、青森市内には「棟方志功記念館」があり、より多くの作品を鑑賞できる。
ウルトラマンのデザインを一手に手掛けた青森出身のデザイナー、成田亨の展示もある。
テレビでお馴染みのウルトラマンや怪獣たちの絵コンテだけでなく、特撮のための撮影セットが再現されていた。
セットの前面に設置されたタブレットの画面を軌道に沿って横にスライドさせると、あたかも実際の街を眼前にするように画面が移動する。
セットだけを見ると「作り物」なのに、画面から得る印象が非常にリアルなのだ。
このほか、ベトナム戦争の撮影で有名なカメラマン、沢田教一の展示もあった。
ここから、徒歩で「三内丸山遺跡」へ。
5000年前の縄文人の生活を想像させる遺物が豊富に展示されている。
細かい骨や石の細工による縫い針やアクセサリーには感心させられた。
展示で勉強したあとで、強い日差しの中、20m以上の巨大な建造物を再現したもの(巨木の柱群)などの住居群を見て回る。
木陰では現在も発掘作業が行われていた。
ここは日本最大の縄文遺跡であり、「北海道・北東北の城門遺跡群」の一部として、ユネスコ世界遺産登録を申請中だ。
行きのことがあったので、帰りは早めに「ねぶたん」のバス停に並ぶ。
乗れたからよかったけれど、帰りもやはり定員を大幅にオーバーしていた。
どうもこの会社はねぶた期間中の乗客数を甘く見ているのではないか?
観光客はねぶたを観るついでに有名な三内丸山遺跡と県立美術館を見ようとするだろうから、これっぽっちの本数で、しかも小さなバスというのはちょっと理解できない。
新青森駅で30分程待って普通列車で隣の青森駅へ。
今晩から始まるねぶたの衣装を着た若者が多い。
駅近くのホテルにチェックインする。
夜、青森ねぶたを観に行く。
市内の中心部を、今夜は25台のねぶたが練り歩く。
色彩絢爛な武士絵が描かれたねぶたの数々。
太鼓と笛による囃子方が奏でるリズムは、情緒的ではないが力強く、「ラッセラー」の掛け声が近づいては遠のいて行く。
「やっぱり日本の祭りはいいなあ」と、祭りをあまり知らない自分は感動していた。(Y)