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清盛無常縁起

2012.03.11 11:10

宮島の大聖院へ辻村寿三郎さんの人形を見に。「清盛無常縁起」というタイトルで平家物語にまつわる人形が並びます。母の実家が平家谷にあるので、幼い頃の私にとっては源氏の白を嫌って真っ赤な四手を吊り下げた神社の光景やそこで上演される神楽や、谷に伝わる平家の姫君の悲恋物語や、息を呑むほど赤く無数の花を付ける椿の大木やそういったものは日常の中にありました。大河ドラマ「清盛」の余波で、祖母の所にもテレビの取材が入ったりして何となくザワザワしていますが、普段はそれは静かな、谷あいの隠れ里でそこは幼い私と弟の遊び場でもありました。

寿三郎さんの人形は、その前に立つ私自身よりも、ひょっとしたら血が通い思いが強いのではないかと思うほどで、日本三大怨霊だと言われる「崇徳院」の人形などちょっと目を合わせるのをはばかられるようでした。故郷のあの谷の穏やかさを思い、平家の物語を思うとなんだか不思議な心持ちがします。寿三郎の人形を見た後は麓の水族館へ。小さな魚たちがひらひらと舞う様はとても幻想的でふとかの有名な平家物語の安徳天皇入水のくだりのことを思いました。まだ年端も行かない幼い天皇を抱き、二位尼はこう囁きます。「浪の下にも都の候ぞ」

幼い天皇の見た水の中の光景がせめて、かくあらんことを。