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教え子からの手紙

2008.02.07 15:00

学生の頃、私は何件か家庭教師をしていたのだが、
その時の教え子から、突然葉書が届いた。

その子を教えていたのはもう11年も前のこと。
もうずっと連絡を取っていなかったので、
名前をみて「あ!」といううれしい驚きとともに、
懐かしさがこみ上げてきた。

少し大きめの絵はがきの半分に、びっしりとメッセージが記してある。
いま、その子は教員免許を取るために頑張っているのだという。

中には、私が当時その子へ

 "素直さ"は"流されやすさ"につながるのではなくて、
 "自分自身の主張"へとつながる

と言ったのだと書いてあり、今でもその言葉が励みになっているとあった。
前後の細かい経緯は定かではないけれども、
その当時、その子が学校で言われたということ、おそらく「もっと自己主張を」
というような内容を受けての話だったと思う。

決してイイカゲンに話をしたわけではない。

私は確かに、その子の一途なまでの「素直さ」を本当に愛おしく思っていた。

私は昔から「素直」という素質をとても愛している。
いろんなものを受け止め、吸収し、消化し、自分のものにして行くには
「素直さ」が必要不可欠だと思っているから。

最初から単なる好き嫌いだけで多くのものを突っぱね、
"排除"しようとする人間に本当の「自己」は育たない。

たくさんのものを柔らかく受け入れていく中で
初めて自分自身にとって大事なものが見えてくるし、譲れないものも出てくる。
それが「自己」につながるのだから。

「素直に生きる」という事には、実は多くのものを受け入れるための
とても強靱な精神が要るのだと思っている。

そう、私は、当時その子に「素直さ」という一種の"才能"を感じたし、
その素直さは必ず豊かな「自己」につながると思っていたのだ。

だからこそ言った言葉。

私が言ったその言葉を、その子は自分の糧にしてくれていた。

なんだか涙が出そうなくらいうれしかった。

自分の言葉が響いたからの嬉しさではない。

私のつたない言葉を自分の糧に出来るほど
「素直」なその子の才能が本当にうれしかった。