掌に了入さんのお茶碗が
京都でのメインイベント!(←あれ?)
"楽美術館"
そうそう、ご存じ楽茶碗の「楽」ですよ。
初代長次郎から当代(十五代・吉左衛門)に至るまで
茶の湯のための器を作り出してきたあの楽家の美術館。
そこで本物の楽茶碗を手に取らせてもらえるっていうんですもの。
そりゃ行きますがな。
当の美術館は、京都中心街の喧噪を抜けた御所の西側に位置します。
美術館といっても、それほど大きな箱ではなく、
敷地の中には展示用の本館以外に、楽家の茶室もあります。
手に取らせてもらえるのは限定15人。
楽家の茶室に通されての鑑賞会。
にじり口からはいると、床に掛け物、花。
窯や茶碗、棗、茶杓も準備してあって、
その季節に合わせた取り合わせがしてあります。
まさかこんなきちんと整えた場で鑑賞させてもらえるとは思っていなくて、
正直驚きました。
茶碗は九代・了入作 緋縅写赤楽茶碗。
奇しくも、もっとも気になる芸術家・本阿弥光悦作の「緋縅(ひおどし)」という
赤楽茶碗を写したとされるお茶碗でした。
当の「緋縅」自体は所在不明なのですが、
光悦の茶碗に思いを馳せることができます。
楽美術館自体、後世に手本となる作品を歴代が残してきたとされるわけで、
この写しの出来は上と見ることが出来るはずですし。
冴えた赤。
手に取ると、見た目よりすっと軽く
手の中から屹立するような大振りな作り。
箆目が力強く入った厳しい形。
茶の湯は元々男の人のものだったんだなぁと実感します。
「緋縅」という鎧甲にちなんだ銘からも、
元の光悦茶碗もまた雄々しいものであったのかしらと伺えます。
もう一つ見せていただいたのは、十二代・弘入作 兜の絵赤楽茶碗。
銘は「五月晴」。
小ぶりで浅めの赤楽に、白い土で細密な兜の絵が描いてあります。
絵は弘入の長男・惺入が描いた物。
先の「緋縅写」が戦場の甲冑を思わせるものであるとすれば
この「五月晴」は男の子が兜をかぶった微笑ましさを感じさせる気がします。
どちらも、五月頭の端午の節句に合わせて、
かつ、対照的なお茶碗でした。
15人の参加者が、
それぞれ数分ずつものゆったりとした時間を掛け、
実際にお茶席で目にするであろう距離で茶碗を眺め、
手に取り、指先でその茶碗を実際に持ったときの
重みや肌合い、箆目の調子、その厚みまで感じ取ることが出来ます。
よくある大寄席のお茶会では考えられない贅沢さ。
百聞は一見に如かず。
そして触れることが出来たなら、なお。
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掛物 「無事是貴人」 鵬雲斎
釜 田口釜 大西浄玄 惺斎書付
風炉 琉球風炉 浄玄 惺斎書付
水指 木地釣瓶
茶器 一閑折溜大棗 鵬雲斎在判 書付
茶杓 鵬雲斎供筒 銘 清楽 為楽美術館開館披露
広間床 山之繪画賛 雨後晴好 即中斎筆