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そして三色紙。

2010.09.14 15:00

「王朝の名筆」展は、サブタイトルに"三蹟を中心として"とあるように、

サリーちゃん、とうふうさん、こうぜいさんの書はもちろん必見なのだけど、

個人的にとても楽しみにしてたのが『三色紙』。



色紙類という

ちょうど"いろがみ"くらいの料紙に、

和歌一首を一枚ずつに散らし書きしたものが世に伝わっているんですが、

その色紙類の中でも最高峰といわれるのが

「升色紙」「継色紙」「寸松庵色紙」の三つ。


それらをまとめて『三色紙』と呼ぶの。





もう何度も何度も臨書した古筆の

その実物が目の前にあるというのは、

それこそ超の付く有名人に生で会ったような感動で。


 


(「升色紙」・今ははや恋ひ死なましを相見むとたのめしことぞ命なりける)


 なんておしゃれな線の絡め方。

 ここはこんなに墨がたっぷりと動いて。

 私はこの余白をこんなに美しく書けていたかしら。




和歌一首を綴るのに、

単なる「記録」の為に記されたのではなく、

明らかに"いかに美しく綴るか"という視点で

「作品」として生み出された形。



書に携わっていない人でも、

あの色紙類を見て、

「同じ和歌一首を自分ならどれだけ美しく綴ることが出来るか」を

考えてみると分かると思うんです。

それがいかに秀でた表現なのか。



あの自由な余白、線の長短、墨の潤渇、揺らぎ。



1000年以上も昔から、

私たち日本人は、どれほど文字を綴るということに

細やかな意識を向けてきたことか。


文字に「記録」や「記述」の為だけでなく

「美しさ」をこれほど貪欲に求めてきた、

その鋭敏な感覚は何なんだろう。




書の展覧会を観たことのない人も

もっと素直に感じてみてほしいんです。



世界中探したって、あんなに美しい文字の綴り方の出来る民族は

他にいないわよ。



きっと、文化に誇りを持つってそういうことなんだと思う。