Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

「椿恋文 -谷に咲く-」  

2011.05.29 15:00





(「椿恋文-谷に咲く-」・68.5×29cm・2011)


幼い頃よく遊んだ平家谷は

平家の隠れ里である故に、

源氏の色である白を遠ざけ

神社のしめ縄に吊す四手までも赤く、

その神社の境内にある

一抱えもある大きな藪椿は

毎年赤い花を無数に付けるのです。


赤い赤い椿の花は

見上げるとまるで我が身に降り注ぐようで

幼心にも胸が痛くなりました。

美しいものに対する「畏れ」を

私に教えてくれたのはあの椿なのかもしれません。



平家谷にはいま千本を越す椿の木があり

そこはまさに"椿の谷"なのですが

私にとって故郷の象徴は

あの一本の藪椿に他ならないのです。


*


赤い赤い椿の花を

紅の紙に墨一色で。


*

書作品と呼ぶには少し異端であるかもしれません。


ただ、私にとっては幼い頃から

"絵を描くこと"と"字を書くこと"の境界は

とても曖昧なものだったのです。