「水のメタモルフォーゼ -水から冰へ-」
(「水のメタモルフォーゼ〈水〉」・242×273mm・2011・個人蔵)
水の泡のような染め画仙紙を選び取り、
「水」という篆書体を書く。
水という字は水の流れを表す形から生まれたという。
水の象形から文字へ。
その抽象化と省略の過程には
デザインという作業に近い感覚があるように思う。
抽象化されて生まれた文字に再び水を含ませ
水の流れへ引き戻そうとする作業は矛盾しているだろうか。
文字の中に水の流れを作りたいと書いた作品。
(「水のメタモルフォーゼ -冰-」・242×273mm・2011・個人蔵)
氷のきらめきを含むような雲母砂子の画仙紙に
「冰(氷)」の篆書体を書く。
水は、冰(氷)へと形を変える。
水が結晶していくように構成する線が結晶と化していけば、
そこには、氷の温度さえ含むような文字が生まれはしないだろうか。
黒一色の墨で、白く光る文字を書きたいと願った作品。
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二枚の作品が連なって生まれる物語。水から氷へ。
この作品は、BINGO de ART展の巨大作品へと続いていきます。
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私が「かな書作家」として書壇で活動する時には、
その表現するものとして歌や句や詩を選び、
言葉を綴るということ、
いかに美しく綴るかということに心を砕きます。
歌や句や詩は、それらがすでに言葉として完成された芸術であり、
また、書は途方もない年月、連綿と続いてきた大きな芸術であり、
それらを扱う畏怖と憧憬を抱えて表現しているような気がします。
言葉を織りなしてきた先人たちと
書を文化・芸術として伝えてきた先人たちの
大きな流れの中に身を置いて打ち震えながら。
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そして、今回の作品のように
「かな書作家」という活動域を出て表現するときには
言葉としてまとまる前の、
最小単位であるたった一つの文字をテーマとして捕まえて
その一つの文字の物語に強く惹かれ、心寄せ、
それをどう表現するかということに
個として遊び、挑んでいるような、そんな感じがしています。