Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

「きさらぎの」

2011.12.20 15:00




(「きさらぎの」・本紙約180cm径・仕上がり寸法約210×240cm・2011)


*


きさらぎの空ゆく雲を指さして春ならずやと君にささやく (太田水穂)


***


正筆会青年部による展覧会「暢心展」に出品するために制作した作品です。


地元・福山でも展示したいと、

急遽、9月の一門展「玉葉会書作展」でも一旦発表しましたが、

その後さらに書いて表具し直し「暢心展」のために仕上げました。



私にとっては陶芸や現代アートの分野での作品づくりがそうであるように

書作品もまた"文字を書く"ことはもちろんのこと

それを表装なども含めてどう見せるかまで考えることが

作品づくりの楽しさだと思っています。



今回の作品は"大きな球体"というイメージで構想を始めました。


紙は円形に。

文字のバランスも中心は大きく、外は小さくして立体感を。

そして表具は下1/3に色の変化と質感の変化を重ねて

円形の本紙に立体感と浮遊感、奥行きが出るように

色の変化や生地それぞれの幅も指示しました。



厳しい寒さ残る二月の空の

その遠くに見える雲に

春を感じるという歌意を

ふわりふくらむような作品で表現したかったのです。



紙面に春の気配を含むように。



今までで最大規模のかな作品。


構想を思いついたときに、正直、完成を不安に思う気持ちもありました。

私にとっては今まで書いたことのない規模のかな作品ですから

大きさだけでもかなりの挑戦である上に、

円形の紙面の難しさ

それに合わせた文字構成の難しさ

何よりその規模に見合うだけの線を出すことの難しさ。



でも、自身最後の暢心展に悔いを残さぬように、

「のびやかな心」という暢心の意に背中を押されるように、

青年部の仲間とともに作るという心強さを頼りにして、

いつも助けてくださる先生方や先輩方の存在を思って、

制作を決めました。




書くごとに力不足が本当に悔しく、苦しい制作でしたが

それはそのまま表現することの楽しさでもありました。



「手本」の存在が当たり前のようになっている書道の世界で

手本なしで一から作っていくという暢心展のスタイルは

本当に大事な作品づくりということの意味を考えさせてくれます。



この作品づくりを、自身の糧として

次への作品、また次の作品へと

繋げてゆきたいと思っています。