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古梅園

2012.03.04 15:00



小さな灯心に火を点して

十五分ごとに煤皿を回し

長い時間掛けて煤が集められていきます。


室の中の百余りも並ぶたくさんの小さな灯は

ゆらゆらとあまりに美しくて

わけもなく切なく哀しくなるほどでした。





大学生の頃、今の師匠についてから

たくさん使ってきた古梅園の墨。

かな書に携わるからには

いつか行ってみたいと思っていた奈良の古梅園



一つ一つ、厳選された原料を選び、

一つ一つ、人の手を経て、

一つ一つ、時間を掛けて。



墨が作られていく様を

丁寧に案内してもらいました。


ああ、こんなに大事なものを、大事に扱って、

そしてようやく文字が生まれていくのだと改めて思う一日でした。


握り墨を作る為に、

職人さんの手からそっと渡された練り墨は

熱を帯びて温かく

手の中に柔らかく

小さな愛おしい何者かを掌に握りしめるようでした。


4月には、職人さんの膨大な手間のほんの隙間に、

私自身の手を経ることを許された握り墨が

できあがってくるそうです。


まだまだ若い墨ですけれど、

古梅園の古い墨と摺り合わせて、

次の読売書法展の作品を仕上げようかなと思っています。