住野よる『君の膵臓をたべたい』
いやもう、まずね、タイトルのインパクトが半端ないでしょう、この本。そのインパクトで狙っていく系のキャッチーな本かなーって思ったり。その上、難病で余命僅かな女の子と、そのクラスメイトである主人公。そういう設定も、ほら、一昔前に流行った『世界の中心で愛を叫ぶ』の原作が思考停止するほど拙かったので(ゴメンナサイ。笑)この手の本はちょっと敬遠してたんですよね。正直。ただね、もともと専門書から大衆文学まで乱読派ですから、時にキャッチーな青春号泣系(?)を読みたくなることもあるわけです。で、ちょっと長ーい新幹線移動があったのでそのついでに読む。その結果。予想に反して"愛を叫ばない"ところが良かった(笑)「君の膵臓をたべたい」そのフレーズが読み終えた後に、キャッチーでも、グロテスクでも、大仰でもなく優しく丁寧に響くと言うこと。そこへ集約させるように、きちんと文章を積み上げてあるということ。そういえば敬愛する谷川俊太郎さんも言ってた。一般の人の言葉は「好きだ」と言うときに、その真偽のほどが重要だけれど、詩人の言葉は「好きだ」というのをどれだけ効果的に伝えられるかが重要なのだと。ならば"相手がどれだけ大切か"ということを、「君の膵臓がたべたい」そう表現できるって凄いんじゃないか、と思うのです。これ、教室の生徒に勧めてみようかな。主人公たちと同じ高校生の心が少しでも震えるとしたら、素敵なことだと思うから。***そうそう、いろんな本読むけど、なんでか泣いちゃう作品に限って公共交通機関での移動中に読んでしまう率が高い私。これは東京~福山間の新幹線の車内で読んでしまった。真っ赤な目をしてぐすぐすいってるところに車掌さんの容赦ない「乗車券拝見いたします。」なんてこった。