【切ない話】誰も来なくなった誕生会に・・
僕が小学校4年生の時、
10歳の誕生日会を開くことになった。
土曜日に仲の良い友達、
みんなに声かけた。
「明日来てくれる?」
って。
みんな、「うん!絶対行くよ!」って言った。
俺は引っ込み思案で誕生日会なんて
開くの初めてだったからドキドキしてた。
母さんは張り切ってケーキを買ってきた。
プリンアラモード?
の小さいやつをみんなの分。
人数分。
当日ドキドキしながら待ってたけど。。。。
来ない、だれも。
10時、12時、ずーと待って3時近くなった。
「電話してみたら?」母さんは言った。
電話したけど誰も出ない。
いや、親とかは出るけど
「出かけた」とか「用事がある」とか。。。
最後の一人。
「あの○○君いますか?」
「ちょっと待っててね」
いた。
「もしもし、今日来れる?」
「ごめん、用事が出来て。今日はいけない。ホントにごめんね」
「そうなんだ。わかった、じゃあね」
「うん、じゃあね」
僕は聞き逃さなかった。
電話の向こうに誕生日会に誘った、
みんなの笑い声が聞こえた。
あー、こいつの家にみんないるのか。
そのうちに雨が降り始めた。
雨はどんどん強くなって、土砂降りになった。
もの凄い寂しさに包まれて、一人で泣いてた。
「みんなの分食べちゃおうか?」
母さんは言った。
「・・・いい、いらない」
食べる気にはなれなかった。
腹がキューッと締め付けられて、無理だった。
雨が土砂降りで更に哀しさを煽った。
『ピンポーン』
5時くらいかな、家の呼び鈴が鳴った。
「はーい」
俺はグズッてたから母さんが出た。
「みー君来たよ」
俺は赤くなった眼をこすりながら玄関に行った。
そこにはずぶ濡れのみー君が立っていた。
「ごめんね。塾があって、こんな時間にきて」
俺はびっくりした。
みー君とは昔はよく一緒に遊んだけど、
クラスが代わって
あんまり遊ばなくなった。
と言うか、呼んでなかった。
誕生日会に。
彼は俺の誕生日を覚えていてくれた。
「はい」
みー君はビニール袋を差し出した。
中古のファミコンのソフト。
今でも覚えてる、
『コナミ ワイワイワールド』が入ってた。
「じゃあね。」
みー君は帰ろうとした。
俺は「待って」と言った。
「ケーキ、食べない?」
母さんはみー君の家に電話をかけていた。
『遅くなってもいいですか?帰りは、お宅まで送りますので』
俺と、みー君はファミコンをして、
母さんの料理を食べて
みんなの分のケーキを食べた。
たくさん、たくさん
ほんの2時間ぐらいだったけど、
最高に楽しかった。
みー君、あのしてるだろう。
あの時はホントにありがとう。