丸編み生地製造の勉強-鹿の子編-
このシリーズで初めてリクエストをいただいた。
鹿の子を知りたいとの事なので鹿の子について書こうと思う。
鹿の子も表鹿の子と裏鹿の子などあるが、今回は一般的な鹿の子、表鹿の子について。
鹿の子は主にポロシャツに使用されているシングル編みの生地である。
棒編みの鹿の子とは編みとは異なる。
今回はカットソーの鹿の子、今まで紹介してきた天竺やフライスと全く違うテクニックが入ってくる。
天竺やフライスはシングルかダブルかという違いはあれど、針の動気がニットポジションという部分は共通している。
ここで今までにない初めての言葉、針のポジション。
針のポジションとは、ニット、タック、ウェルトの三種類の針の動きのことを言う。
鹿の子はニットとタックで構成されているのでニットとタックの説明をする。
ニットはその名の通り、一個一個編み目を作っていく編み方である。
タックとはこの図解でわかるかどうか、一度ニットの状態の糸にさらに一段上の糸を引っ掛けて二本一緒に編みこむ編み方のことをいう。
おそらくもう意味不明と思われているだろうが、、、続ける。
タックするとこのような編み目を作る。
先ほどの針の動きよりは解りやすいと思う。
そして改めて鹿の子に戻ると、鹿の子はこのタック編みとニット編み(普通の編み方)を繰り返して編み目に「V」形を作っていく。
表鹿の子は4段完成という組織の作り方なので、一つの組織の循環を作るのに4目使用することになる。
普通の天竺は一つの編み方でニットという組織の作り方を延々と繰り返すからフラットな編み地になる。↓天竺の一段完成。
それに対して、鹿の子の目は「V」の柄が斜めに連続する構造になっており、↓のような糸の入り方になっている。
ニットタックニットタックを一列目、その順序を入れ替えて二列目タックニットタックニット、、、
これを繰り返すと鹿の子になる。
この柄を作るために、職人は無地の天竺編みから「組織替え」という作業を行う。
カムという編み針が通る道を入れ替えて針の動きに変化をつけていくのである。
このグネグネした溝があるパーツのことをカムといって、糸口の数分入れ替えて組み合わせることで柄を作る。そして、この溝に編み針のヘソが通ることで編み針の動きが変わって編んだときに柄が変わっていくのである。
なので、簡単に「柄を変えてくれ」という依頼は(めっちゃ手間がかかるのに簡単い言うよねー!)といった具合の職人の負の感情が確実にうまれる。
90口糸口がある無地の天竺編機を鹿の子に柄変えしようと思ったらカムを90個入れ替えなければならない。
そのために2600本近い針を一旦外していかなければならないので、慣れた職人でもゆうに1日はかかる。
一日で出来たら早い方だ。
鹿の子に柄変えを依頼するときは、めっちゃ手間何ですよね、ありがとうございます!ほんとすみません!って言う気持ちをたっぷり込めよう。
鹿の子はその性質上、やはりスポーティな印象になる。
タッチも表面凹凸があるためサラッとしている。柔らかい糸で編んでも硬い印象になる。
6年前くらいに「Band Of Outsiders」で採用された鹿の子は46ゲージと言うスーパーハイゲージで非常に品があって生地としては大好きだったけど、透けるから買ったことはない。
ここまでハイゲージになるとスポーティとかそう言う印象ではなく、芸術品の域だったなと思う。
結局何が言いたかったかわからなくなったのでここでやめよう。
ラコステとかフレッドペリーとかがこの辺のプロなのはご存知の通り。
そのイメージが強すぎて、鹿の子=ポロシャツになってしまってるから、あえて違う用途で採用して鹿の子の可能性を広げていけるデザイナーさんが現れたら鹿の子の需要ももっと広がるのだろう。