【 ワークショップ 】「mimamo by &HAND」ワークショップレポート
リードユーザーとして視覚障害者と鉄道会社をお招きし、現在の「声かけ・サポート」運動の課題感を共有した上で、「双方にとって理想的なサポートのカタチ」について対話を行いました。対話の一部を共有します。また、本ワークショップを通じて得られた情報は、「視覚障害者向け&HAND」の開発に活用させて頂きます。
mimamo Workshop 01:視覚障害者・鉄道会社と共創するこれからのサポートのカタチ
実施日:2018年7月26日
参加者:リードユーザー:8名(視覚障害者:1級4名・2級4名)/ 鉄道会社 社員:10名
企画・実施:一般社団法人PLAYERS
プログラム
- はじめの挨拶
- 鉄道会社のご紹介
- リードユーザー 自己紹介:会場に来るまでの出来事・ワークショップに期待する事
- リードユーザー 対話:「声かけ・サポート」で良かった体験・悪かった体験について
- 鉄道会社による事前アンケートの結果共有
- 対話:鉄道会社からリードユーザーへ質問 / リードユーザーから鉄道会社へ質問 / 双方にとって理想的なサポートのカタチとは?
- 視覚障害者向け&HAND へのフィードバック
- おわりの挨拶
ワークショップReport http://www.andhand-project.com/posts/4707411
ワークショップPhoto https://bit.ly/2MbZ4cF
ワークショップMovie https://youtu.be/C1gSXvZ44GU
ワークショップMovie フルバージョン(2時間13分) https://youtu.be/guspY2857PQ
視覚障害者の現状課題
スムーズな鉄道利用には事前準備が不可欠
- 知らない場所に出掛ける時は、事前にネットで調べる。
- 一人で初めて行く場所は事前にネットで調べるが、その情報が間違っているとアウト。
- HPに改札の位置や名前が載っていない事があり、駅に電話してルート確認している。
- JRは駅の電話番号が載ってなくて困る。(迷惑電話対策)
- 早めに自宅を出るのが一番簡単かつ効果が高い。知らない場所なら+20分。大きな駅ならさらに15分。
視覚障害者はさまざまな場面で困っている
- 行き先などは事前に調べられるが、その瞬間瞬間で助けて欲しいことがある。
- 「乗っている時間」よりも「乗り換え回数」の方を意識しています。
- 「ホームで並ぶ場所」や「電車の入口」が分からない。
- 「ホームドア」のどこが開くかが分からない。
- 電車に乗る際に「降りてくる人のタイミングが悪い」とぶつかりそうで怖い。
- 「半自動ドア」がすごく大変です。
- 車内で「次は東京駅〜」のようなアナウンスを聞き逃すと困る。(聞き取り易くする為に録音した女性の声にして欲しい)
- アナウンスで「優先席が必要なお客様には~」と流れているが、その「優先席の場所」が分からない。
- 到着駅で駅名のアナウンスが聞こえなかったり、流れないと困る。(近くの人に聞いている)
- 「音声案内」と「ドアが閉まるタイミング」に差があると、危ない目に合うことがある。
- ホームに降りた時に「左右」が分からない。(周囲の人の足を見て流れに乗る。ピヨピヨ音を追う。急いでいる時は声を掛けて聞く)
- 「点字ブロック」がない場所は、音や雰囲気、人の流れで判断している。
- 「方向を勘違い」しているとかなり焦る。間違いに気づいた時に、修正能力がないので困る。
- 状況の変化がすごく苦手。「勘違いや思い込み」で歩いていることが結構ある。
- 「工事の情報」について教えて欲しい。点検中に気づけなくて突っ込むこともある。
- オリパラによる工事の影響でルートが変わる。構内図に「迂回路」を出してもらえると嬉しい。
- ホームを走ったり「歩きスマホ」をされると危なくて怖い。
- 安全系の話になると「ホームドア」の話になるが、その前にもっと大事なことがあると思う。
声かけ・サポート運動について:視覚障害者より
声かけは着実に浸透している
声かけ・サポート運動が始まった頃は、突然腕を引っ張られたり、いきなり杖を持たれたりとかされたが、ここ半年ぐらいですごく声かけが上手になったなと思います。
- 2、3年前ぐらいから、皆さん自然に声をかけてくれるようになって、とても感謝しています。
- 「どこ行くんですか」ではなく「何かお手伝いできることありますか」とか、駅のアナウンスもこの忙しい駅で誰が聞いてるのかなと思っていましたが、ちゃんと聞かれている。
- 日本人はみんなシャイ。でも「声かけ・サポート運動」などの啓蒙のおかげか、声を掛けてくれる人は増えている。
現在の「声かけ・サポート運動」の方向性は間違っていないと思う。
周りから人がいなくなると、サポートがお願いできなくなるので不安になる。
地方に行くと無人駅で、人に聞けずに困る。
現状はミスマッチが生じている
- 「助けて欲しいタイミング」と「駅員が声かけするタイミング」が一致していない。
- 必ずしも毎回サポートが必要なわけではない。
- 基本的に声をかけられるのは嬉しいが、慣れた駅では断ることもある。断った事に対してネガティブに感じないで欲しいので、できるだけ丁寧に断るようにしている。
- 本当に助けて欲しい時は改札に行く。(人の流れや音で改札に向かっている)
- 駅員さんに頼むとどうしても時間がかかっちゃうので。急いでいる時とかは「もう、えいっ」て行っちゃってることが多い。
- 駅員さんに「お願いできること」と「わざわざお願いしにくいこと」がある。
- 常に「迷惑かけてまで、謝ってまでやりたくない」と思い、諦めて我慢することがある。
駅員の知識とスキルが不十分
- 駅員や乗客が個別に適切な対応をできるように、リテラシーの教育も必要。
- サポート方法を分かってない駅員が多い。(階段の数を数えたり…)
- 階段は上りか下りかを教えて欲しい。
- エレベーターへ誘導されがちだが、エスカレーターで大丈夫。
- 誘導されてる時に止まると、なんで止まったのかが分からないので、説明して欲しい。
- 点字ブロックの上だけを歩いて案内されることがある。(人が案内してくれる時は点字ブロックは不要)
声かけやサポートが過剰過ぎて、恥ずかしいことがある。
求められる柔軟な対応
- 求めるサポートの仕方は人それぞれ。視覚障害者だからこうという正解はない。
- 声かけの仕方やサポート内容は「状況に応じたさじ加減」が大事。
- 特にJRはルールが硬すぎて、個別対応してくれない。
- JRはこちらがルールに合わせないといけない印象。(私鉄の方が融通が効く。良い意味でサバサバしている。乗車までのサポートで良いですというと、本当にそこまでにしてくれる)
- 目の前に来てる電車に「乗りたいです」って言っても、絶対乗らせてくれない。枠組みの中に僕たちが入っていかなきゃいけない。
- 駅員がいるのに、すぐに対応してくれないことがある。
- サポートが必要ないのに、待たされてしまうことがある。
本質的にはコミュニケーションを取ることが大切
- 駅員が「階段を考慮するとこっちの方がいいよ」といった乗り換え検索で出てこない情報を教えてくれて、とても助かった。機械ではなく会話したからできたことだと思う。
- 電車乗る時に転んで、すごい脛を打ってしまった。次の日に駅員さんが「昨日は大丈夫でしたか?すみません声をかけるのがうまくなくて」と言ってくださった。見ててくださった事と、わざわざ謝ってくださって、すごく感動した。
- ルールやマニュアルじゃなくて「コミュニケーション」がスタートになるべきだと思う。
- 「コミュニケーション」を取らないと、お互いチグハグなサポートになってしまう。
- 仕組みをどうするかというより、今回の様な「お互いを理解する場」を作ってもらった方が圧倒的にいい。
一般の方のサポートも助かるが、リテラシーの向上が課題
- 助けてもらうのは駅員だけでなく「一般の方」でも助かる。
- わざわざ駅員さんにお願いしにくい「買い物」をサポートしてくれると嬉しい。(ホームのNEWDAYSは移動が怖い…)
- 「レストラン」でのメニュー選びで迷ったり、色んな料理を楽しみたい。(美味しそうな匂いがしても、わざわざ聞くのは迷惑を掛けてしまうので、諦めていつものやつを注文している)
- 一般の方の対応は質がバラバラ。視覚障害者の実態を知らないからかもしれない。
- 駅員だけではなく「一般の人の意識」を高める必要がある。
声かけ・サポート運動について:鉄道会社の社員より
サポートの知識やスキルが十分ではない
- 適切なサポートの仕方が分からず、自信がない。
不安なのでマニュアル通りにしか対応できていない。
そもそも視覚障害者への「理解」が足りていない。(スマホでLINEを駆使してる事をしらなかった)
駅社員時代(サービス介助士の資格無)は「適切なサポート」が何なのか自信をもって答えられないので、十分なサポートはできていなかったと思う。
- サービス介助士の資格取得を推奨しているが、駅社員全員が取得している訳ではないため、資格がない方の場合は適切なサポートが出来ていないと思われる。
現状は十分にサポートできているとは言えない。実際、白杖ユーザーの転落事故は月に数回起きている。助かっているから報道されていないだけ。
他の業務中で気づかない、対応できないことがある
- 担当業務の対応(改札・きっぷ売り場・ホーム監視)をしていると、視覚障害者の方に気づかないことがある。
- 気づいていないだけかもしれないが、視覚障害者の方を見かけることが少ない。
- 窓口を閉めてまで、お声がけに向かうかどうか迷うことがある。
- 駅社員だけでは、対応人員が足らない。
声かけやサポートをすべきか躊躇することがある
- お声がけしても「サポートは不要です」と言われることが多い。
- 社員全員がお声がけをすると、逆に迷惑に思われるのではないかという考えもある。
- 「いらないです〜」って言われた時に、本当に助けはいらないのか?迷うことがある。(視覚障害者も条件反射で断ってしまうことがある)
- 「サポートが要らない」というのは、本当に要らないのか迷うことがある。忙しそうだから気をつかって大丈夫ですと言っているのかなとか、よく分からなくて無駄な心配をしてしまっている。
- 「本当は声がけをされたくない」とか「知識を持ってない人からら声がけをされたくない」というご意見がある。もしかしたら、逆に自分たちが苦しい世の中にしてしまっているのでは、という不安もある。
- 声かけのタイミングなどを、もっと現実的・具体的にして社員に周知させるべきだと思う。
双方にとって理想的なサポートのカタチとは?
マニュアルに縛られずに、コミュニケーションを取って柔軟に対応する
- マニュアルにはまらない部分については「コミュニケーション」を取りながらやりたい。
- ルールや思い込みではなく「コミュニケーション」をベースとして、必要な時に必要なサポートが受けられるようにする。
- 案内の際にも全てを分かっていなくても「コミュニケーション」を取れば大丈夫。
- マニュアルにガッチリハマるのではなく「人と人のコミュニケーション」を取りたい。
- マニュアル対応ではなく、お互いを理解して行くことが大切。
一般のお客様も含めて社会全体で見守り、サポートする
特別なスキルはなくて構わないので、駅員だけではなく「一般の人」にも助けて欲しい。助けて欲しい内容は会話すれば良いし、事故が起きても視覚障害者の自己責任だと思う。
- 必ずしも「駅員による全行程サポート」である必要はない。一般の方の声かけでも十分にサポートできる。
- 皆の「出来る範囲のサポート」をリレーのように受け渡してサポートしていけると良い。
- 一般の方に「電車の席が空いている事」「電車の吊革の場所」「トイレの水を流すレバーの位置」「買い物を手伝ってもらう」など手軽なサポートをしてもらえるだけでも、とっても助かる。
- 将来的には、駅員からお客にサポートを頼める社会になって欲しい。(駅以外にも広めるきっかけになる)
- 車椅子の方に道案内してもらったことがあり、とても良い体験だった。これこそ共生社会だと思う。
- 声かけサポート運動は、駅社員や世間の人々も「やらされ感」でやっていては絶対に推進されない。駅社員のみならず、世間の人にも視覚障害者の方の見え方、世界観を共有していくことが今後も必要。
今回のような対話を通じて、お互いを理解していくことが大切
- 一方的な「視覚障害者からの要望」や「鉄道会社からのサービス提供」はおかしい。
- 目隠しでの疑似体験も良いけど、固定概念にはまらずにお互いを理解することが大切。
- 今日のワークショップのような「お互いの違いを話し合える場」があることが重要だと思う。
- こういう場を踏まえて、お互いに理解を深めていくことが大切。
- 健常者にも障害者にもそれぞれ色んな人がいる。お互いにコミュニケーションを取れる場を作るべき。
- 声かけサポートの先にある、相互に理解し合える社会を目指したい。
- 理想的なサポートを実現する為にも、みんなで飲みに行きたい。
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