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美的なるものを求めて Pursuit For Eternal Beauty

市民に愛される心の拠り所「紙のカテドラル」(坂 茂 設計 2013年8月竣工)

2018.08.09 00:34

(「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2018.2.17>主な解説より引用)

「建物」「建築」というものを、根底から覆す発想力と実行力・・・

 舞台は、ニュージーランドの南島に位置するクライストチャーチ。市の中心部には、ランドマークであるカテドラル大聖堂が建っていた。その大聖堂が、2011年のカンタベリー大地震で崩壊してしまう。

 建て直しまでの期間における暫定施設、つまり「仮設」として取り入れられたのが、日本人建築家・坂 茂(ばん しげる)氏が設計した「紙の大聖堂(カテドラル)」である。

 キーワードは、①強い素材 ② 早く安く美しく ③ パーマネント(永続性)

 外部は雨風を凌ぐため、ポリカーボネイドのプラスチックの板で覆われるものの、建物のほとんどが「紙管(しかん)」と呼ばれる98本の紙製の柱で組まれている。700名収容の教会内部前部には、説教台、聖歌隊席、シンボルの十字架などまでが、紙材質。

 軽やかで、しなやかで、温かみのある建物。 一方、幾何学的なジオメトリー、黄金比なども、以前の大聖堂を模して取り入れられた。

 カンタベリー大震災後から3か月、途方に暮れていた教会の関係者が、ある建築誌に紹介されていた坂氏の「紙の建物」の記事が目に止まり、2011年5月日本にいる坂氏にコンタクトメールを送る。それからわずか2年5か月間の2013年8月、建築期間にあっては、たったの1年で完成させたのである。

 紙の特性としてある、「濡れる」「燃える」などから、建物に紙材質を選定する発想は出てこないのであるが、プリツカー賞、マザー・テレサ社会正義賞を2017年に受賞した、坂氏のすぐれたアイデアと構想力がそこにあった。

 坂茂氏いわく、「コンクリートでも、お金儲けのために造った商業施設は【仮設】である」と。建築家は、どれだけ社会の役に立っているのか。一部の人にしか役に立っていないのではと、自問自答する中で、坂氏はルワンダで国連難民支援のために、「紙のシェルター」を建てていった。

(番組を視聴しての私の感想綴り)

 私は、ニュージーランドのクライストチャーチには、これまでに2度訪れている。

 市内の中心部にランドマークとして建っていたかつての大聖堂にも、足を運び見学させていただいた記憶があるだけに、ショックであると同時に、今回の番組を拝見して、心の温まる想いにもかられた。

 「紙の大聖堂」は、いまや希望や復興の象徴として、世界中から年間30〜40万人の人々が訪れているという。シンプルでありながら、人々の心の拠り所となった造成物。

 「仮設」であっても、市民たちの心の拠り所となり、たかが「紙」で造っても、市民のみなさんから愛されれば、パーマネント(永続)になりえる。

「愛される建物」・・・いい言葉であり、いい響きですね。でも、それはどこにどれだけあるのでしょうか。驚きを味わうとともに、感動を覚えた今回の建物である。音楽であっても、感動を伝えられるものでなければとも・・

写真: 「紙のカテドラル」(坂 茂 設計 2013年8月竣工) 「美の巨人たち」テレビ東京放映番組<2018.2.17>より転載。同視聴者センターより許諾済。