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ピアノ&ア・マイクロフォン 1983 リリース記念 リレー・インタビュー。

2018.08.10 04:00

ムック本『CROSSBEAT Special Edition プリンス』を2016年にまとめられて、発売されたシンコーミュージックのエディター、荒野政寿さんに今回はお話しをうかがいました。

荒野さんは10代の頃から、プリンスの大ファンだったそう。


■■■CROSSBEAT Special Edition プリンスはディスク・レビューをしっかりと掲載したいというお話を伺いました。

他にもたくさんプリンスの本は出ておりますが、この本の一番の読みどころはどんなところになりますか?

荒野:まず第一に、「プリンスがシンボル・マークを含む自身の名義で発表したアルバムの全貌を見渡せる内容にする」ことを心がけました。ゆえに他名義の作品や客演作、関連アーティストの作品まで完全に網羅はできていませんが、本人のオリジナル・アルバムとして世に出た作品については一通り把握することができます。それだけでも常人のリリース・ペースを遥かに越えた膨大な量ですから、ビギナーにも入りやすいように、基本的な作品について一回まとめておくのが何より急務、と思っていました。作品量が多いせいで、「プリンスは好きだけど、全ては聴いていない」というファンも実のところ少なくないと思うんですよ。1枚でも多く聴いて欲しい、という願いが個人的にもありました。

 また、取材嫌いで知られるプリンスが大ブレイク以前の81年に応じた珍しいインタビューと、奇跡的に日本で行なってくれた96年の記者会見全文、日本向けの貴重なインタビューをまとめて読めるのも本書の特色だと思います。記事の掲載を快諾してくださった岩崎隆一さん、内本順一さんは、僕自身が読者としてプリンスについての文章に度々触れてきた、信頼できる「プリンス道の大先輩」です。


■■■荒野さんとプリンスとの出会いについて教えていただけますか?

荒野:最初にプリンスを認識したのは、レコード店でジャケットを見た『戦慄の貴公子』です。あの目力と、帯の挑発的な叩き文句に興味を持って、「新しいタイプのロックンローラー」としてプリンスを聴くようになりました。2枚組の『1999』が出てしばらく経った頃でしたが、そこからのシングルよりも先に、社会派っぽい「ロニー、トーク・トゥ・ロシア」が好きになりました。

■■■貸レコード店が閉店する際にプリンスのシングル盤をすべて買い取ったというお話が印象的でした。

当時からコレクターズ気質があったのでしょうか?プリンスのアルバムはすべてコレクションされてますか?

荒野:プリンスはシングルB面曲の質が異常に高いことに「17デイズ」でピンときて、他のシングルも欲しくてたまらなくなったんですよ。でも、小中学生のお小遣いだと、700円もする国内盤新品の7インチは、月に1枚買うぐらいでやっとじゃないですか。それで悶々とエアチェックを続けて、初来日公演も親から行くことを禁止されて行けずじまいで。

 高校に上がってから、たまたま近所の大きなレンタル・レコード店がつぶれたときに、シングルが1枚100円均一で放出されまして。そこでプリンス関連のシングルをまとめて入手できたときは、うれしすぎて本当にどうにかなりそうでした。誰にも頼まれていないのに、B面集のカセットテープを作って友達に無理矢理配ったのを覚えています。それが二度目の日本ツアーでしびれまくった直後ぐらいでした。そこからはもう、ズブズブです。どこかでプリンスから離れるということはなくて、新作が出れば必ず聴いてきたし、それがこれからも続くものだと思っていました。


■■■今回の『ピアノ&ア・マイクロフォン 1983』はどのあたりが聴きどころになりますか?

荒野:何しろ並外れたパフォーマーですから、デモのつもりで録った曲でも気を抜いている感じが全然しない。ヴォーカルもピアノも、強弱のコントラストや、感情の起伏がしっかりと描かれていて、創作メモの域を出たひとつの作品として非常に魅力的ですね。そういうタイプのアーティストだからこそ、これまで膨大な量の海賊盤が出回ってきたんだよな、とも改めて思います。今回はブートレッグと違って、当たり前ですが音質がとてもクリアで、眼前で彼が歌っているような生々しさを感じられるのも魅力のひとつ。痛いほどの生々しさ、です。


■■■秋に新たなプリンス関連の本の発売の予定があるそうですが、差支えない範囲で教えていただけますか?

荒野:ムック『CROSSBEAT Special Edition プリンス』の取材でレコード会社の歴代担当氏や、日本でのレコーディングに立ち会われたエンジニア氏、クラブイベント「プリンス・ナイト」を運営されている方にお話をうかがったのをきっかけにして、プリンスが日本に残した足跡を1冊の書籍にまとめたい、という欲求が一気に高まりました。「プリンス・ナイト」のメンバーで、プリンス研究家としても著名なTUNAさんに協力をお願いして、「プリンスと日本」をテーマにした本の取材を進めています。直接プリンスと接した方々や関係者はもちろん、彼の影響下にあるミュージシャンの皆さんにもお話を訊き始めたところです。今冬の発売を目指して鋭意製作中ですので、ご期待ください。


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