品目は?販路は?新規就農者の戦い方|日下篤さん/Kusaka Vineyards/栃木県芳賀郡市貝町
「いざ農業を始めよう!」と思っても、農地の確保、栽培品目の決定、作付け計画、販路開拓…と新規就農者の悩みは尽きません。
そこで今回は、新規就農をして3年、ポケマルで人気の生産者でもある栃木県芳賀郡市貝町の日下篤さんに、就農にあたって栽培品目の決定や販路の開拓をどのように行なったのか聞いてみました。
ーーまずはじめに、日下さんが就農に至った経緯を教えてください
農業に興味を持ったのは専門学校卒業後、種苗会社でのアルバイトを始めたことがきっかけでした。内容は研究圃場での軽い農作業が主でしたが、働いているうちに楽しくなってきたので、そのままその種苗会社に入社しました。
会社では研究圃場での農作業のほか、栽培委託のために篤農家(とくのうか)さんを訪問する機会もありました。その中で、自然と向き合って黙々と作業をする農業という仕事が自分の性格に合っていると思うようになりました。
ただ研究圃場では、自分がせっかく試行錯誤して育てても、調査をしてしまえばおしまい。その先の販売、利益を上げるところまでやる農家さんにあこがれを持つようになりました。
当時私は29歳で、自分で独立するなら30代になる前だと思っていたので、そのタイミングで就農を決意しました。
ーー日下さんは醸造用の葡萄を中心として、桃やスイートコーン、ヤングコーンを生産されていますが、就農にあたって栽培する品目はどのように決めたのですか?
会社に勤めていた時から農家になるのは大変だと言い聞かされていたので、新規就農の自分には篤農家の人たちと並ぶレベルの商品を作るなんて難しいとわかっていました。
研究圃場では野菜類の栽培をしていましたが、新規就農者の自分がやるなら個性的な作物を作らないといけない、という思いで品目の戦略を立てました。
葡萄をメインに栽培を始めたのは昔から一番好きな果物だったということも大きな理由ですが、それ以上に葡萄には生食、加工(ジュース、レーズン)、醸造(ワイン、ビール、酢)といった幅広い用途があるということが最大の決め手となりました。
葡萄以外の桃やトウモロコシはどちらも栽培の経験があり、各品目の作業の繁忙期がぶつからないものということで品目を決定しました。また桃とトウモロコシは収穫時期が重なるため、将来的には2種のセット販売も可能だと見込んでの選択でした。
ーー新規就農の際、売り先に困るという声をよく農家さんから耳にします。日下さんは就農直後、どのように販路を見つけていきましたか?
私はそれまで作物の調査をしていただけなので、販売は全くの未経験でした。最初はどう販路を開拓していけばよいかわからず、手探り状態でした。
まずは地域にある民間やJAの直売所へ持っていきましたが、時代に追いつくためには自分でネット販売もしていかないと、という意識がありました。ですが、自分でサイトの運営をするような知識もなく手を付けられずにいました。
そんな時、研修中に出会った東京大学の研究者からポケマルを紹介してもらいました。ネット販売は前々からやってみたいと思っていたので、これだ!という気持ちですぐにポケマル事務局に連絡しました。
ーー最初、ポケマルについて知った時どのような印象を持ちましたか?
率直に「すごくいいな」と思いました。(笑)色々な直売所に卸していて販売手数料の相場観を持っていたので、ポケマルの手数料は安いな、と思いました。例えばJAの直売所に出したら手数料は14%でしたが、その日出した分の余りは自分で引き取らなければなりませんでした。民間の直売所は安売りしてでも出した分は売り切ってくれましたが、その分手数料が20%ととても高かったんです。
ーー日下さんは昨年に引き続きこの夏もスイートコーンやヤングコーンなどポケマルを通じてたくさん販売されていましたね。コミュニティページでも、おいしそうな写真がたくさん上がっていました。
直売所だったら、収穫したものを持って行くだけ。その先は誰が食べたのか、どうやって食べたのかはわからないですよね。自分が商品を届けたお客さんが写真付きでコミュニティページに投稿してくれるのは、やはりモチベーションにつながります。
ただ今年は一件だけ、届いた商品のサイズが小さいというネガティブな投稿がありました。直売所は触って納得したものしかお客さんも買わないけれど、ネットで販売するとこういうこともあるのだな、と勉強になりました。もとから少し小ぶりな品種なので、来年販売する時には「他と比べて見劣りするかもしれません」や「雨の影響でサイズがやや小ぶりです」といった注意書きをあらかじめ入れておくといった対策をしたいと思っています。
ネガティブな声に対してもちゃんと対応していくことがその後の販売につながっていくと思うので、最初その投稿を見たときはショックでしたが、今は書いてもらってよかったなあと思っています。
ーーこれまでうれしかった投稿にはどんなものがありましたか?
先ほどのネガティブな投稿の後に、小ぶりだけどとてもおいしかった、子供が市販のベビーフードのコーンは食べないのに食べてくれた、という投稿をしてくださった方がいました。気を遣ってそう書いてくださったのかなとも思いましたが(笑)、やっぱりまた頑張ろうと思えたのはその方のコメントが大きかったです。
ーーコミュニティページでの声のほかに、ポケマルを使っていてよかったなと思うことはありますか?
宛先入りの伝票が自動で届いて集荷に来てくれることですね。自分で配送伝票を作ろうと思うと、全部手書きするか、ソフトを買って手入力で打ち込んで、プリンターで印刷しなければなりません。ポケマルは新規就農者が最初に販売を始める入り口としてはとても便利だなと感じています。
ーー最後に他の新規就農者の方々や、ポケマル利用者のみなさんにメッセージをお願いします!
新規就農の農家にとって、販路の拡大は誰しもが抱える課題だと思います。自分でサイトを開設するのは大変だし、お客さんが見てくれるサイトにするのはとてもハードルが高いです。いわば農業界の弱者である新規就農者にとって、すでに色んな商品を求めてきているお客さんを持っているポケマルは、利用のメリットは大きいなと思っています。
また、ポケマルでは今までとうもろこしのみを販売してきましたが、今後醸造用葡萄の収穫体験といった無形の商品も販売していきたいと思っています。葡萄屋さんとしての活躍もぜひ楽しみにしていてください!
ファンと出会い、育てられる。農家さん・漁師さん向けオンラインマルシェ「ポケットマルシェ」を使ってみませんか?
ポケットマルシェは、農家さん漁師さんが出品できるオンライン上のマルシェです。登録料や月額使用料は無料。スマホがあれば出品から管理まで行え、配送伝票も自動で届く仕組みで初めての方でも誰でもカンタンに個人販売を開始できます。ぜひお気軽にお申し込み・お問い合わせください。
■ご登録の申込みはこちらから
■仕組みについてはこちらをご覧ください