産地のおごりと危機感
和歌山は莫大小(メリヤス)の産地である。
紀三井寺駅周辺に莫大小ロードがあり丸編み工場が密集している。
僕の前職だった本社工場もそこにある。
「産地」という響きだけで、良質なクオリティを提供してくれそうな気がする。
和歌山なら良いカットソーの生地がある、そんな気がする。
確かに生地を企画して色々なチャレンジをしながら技術を研鑽しクオリティを上げている工場もあるが、ただ編むだけという意識の低い工場もある。というかたくさんある。
僕はこの業界に入ってからずっと和歌山のカットソーを扱ってきた。
注文をもらったら自社工場で生地を編んで売るのが仕事だと思ってた。
だが、駆け出しの頃は数量が細かくて自社工場からはじかれまくってた。黙っててもオーダーがくるし仕事は大きいのしかいらないといった雰囲気があった。
少なくとも10反くらいのカタマリになってないとまともに取り合ってもらえなかった。
同業がひしめくかの地域において、そのようなスタンスではいずれ廃れてしまうと思ったので、工場とはかなりやりあって意識を変えてもらうよう動いた。
特段変わった編み地を作れる工場というわけではなく、どのニッターでも作れる生地ばかりだったので顧客対応がどれだけ細やかにできるかが重要だと説いた。
産地というだけで仕事が舞い込むような時代はとっくに終わっているからだ。
和歌山でも密集地から少し離れたところにある工場に弾かれた仕事を助けてもらう事が多かった。
そこの社長は若くて、僕より少し年上。
彼もこの和歌山産地の古い習慣に新しい風を吹き込まそうと頑張っている。↓
かなり仲良くさせてもらっていて僕の色々な試みを一緒になって楽しんでくれている。
業界の未来にかなり危機感を持っていて、産地の活性化の為にも色々とご尽力されている。
今、僕はしまなみコットンファームさんの国産オーガニック超長綿でカットソー商品にチャレンジしているが、その生地を編んでくれているのも風神さんだ。
世代が近いので話も合うし、技術のチャレンジもかなりしてくれる。
過去の成功におごり、大規模な工業仕事ばかり追っているうちに、いつのまにか仕事が枯渇する工場が多い中で、風神さんのように若くチャレンジ精神が旺盛な人とどんどん協業していきたい。
なにより彼とは、飲み友だ。