『経験による意思決定』の価値は下がってきているし、これからも下がり続けます:大阪市の教育関連のニュース記事から考えたこと②
こんにちは。理学療法士の倉形です。理学療法士はリハ専門職のひとつです。。
前回の続きです。
前回でも言いましたが、政策に関して何かを言いたいわけでなく、興味深い題材を見つけたので、自分の考えを整理したいだけです。
経験による意思決定の価値の変化に関して、大阪市の教育関連のニュースを題材に書いています。
前回の流れとしては
大阪市の平均の成績が全国最下位なのを受け、市長が教員への成果主義の導入を検討すると発言
↓
教育委員会は、親の所得が子供の成績と関連するので、まずはこの経済格差をなくしてください。
という議論を紹介した後、
アメリカで行われた社会実験で『教師へのボーナスによるインセンティブは成績改善につながらない』という結果を紹介しました。
推測ですが、おそらく、大阪市長はこの様な実験を知らずに、「自身の経験」から
インセンティブを与える
↓
先生が今より頑張る
↓
その結果、生徒の成績が上がる
と考えたんだと思います。
市長のことをググったところ、バックグランドは法律(弁護士)の方です。もしかしたら弁護士として働いていらっしゃった時にこのような方法で業績が改善したご経験があるのかもしれません。
しかしながら、この様な重要な問題を決定する時には専門家と相談するか、ご自身で適切な『科学的』根拠を探さなければいけません。
市長が『教育の専門家でない』ことが問題なのではありません。『自身の経験から判断した』ことが問題なのです。もし仮に、『自身の経験から』発言したのが、教育の専門家であっても同様に問題です。専門家であっても、非専門家であっても『自身の経験』に基づいて意思決定をしたら、思い付きと同じです。
悩ましいのは、「ロジックとしては」この流れは成り立ち得るということです。
成績が低い
↓
先生の目の前にニンジンをちらつかせる
↓
先生が目の色を変えて頑張る
↓
成績があがる
・・・成り立ちそうですよね??
ただ、ロジックの流れが成り立つことと、実際に効果が上がることの間には深い溝があります。実際に効果があるかどうかは、正直、やってみないとわからない。また、悩ましいのは、いかにたくさんのデータを集めても、研究デザインの力(『ランダムにグループ分けをする』、『適切にデータを集める』など)と統計の力を借りないと、効果があったかどうかを正確に判断することができない(適当に判断することはできます(*_*;))。
このように、
①実際にやってみる
②研究デザインの知識を借りてデータを集める
③統計の知識を使って結果を解釈する。
という手順が必要なのは、「どんな優秀な学者であっても」同様です。これは、世界一優秀な学者やアインシュタインさんのように人類史上に残るような超天才でも同様です。超・超天才であっても頭の中で組み立てただけの理論では適切な意思決定はできません。
私たち、ある分野の専門家は、時に(いつも?(+_+))自分の経験を過信して物事を判断してしまいがちです。気を付けないといけないですね。。。
長くなりましたので次回に続きます。
今日も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
理学療法士 倉形裕史