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還暦間近

2023.08.23 15:32

A.Selmer MARK VI #123599 (1965年製)

第1回目の記事からタイトル見て何のことやらと思うなかれ。わたくしの楽器、今年で齢五十八になるヴィンテージ・テナーサックスのお話です。

ジャズやポップスを通じてサックスに触れた方なら一度は耳にしたことがあるであろう、いわゆるアメセルというやつですね。その中でも約20年間に渡って製造され続けた世界の名器、マーク6の前期~中期の個体をここ2年ほどメインで使用しています。


この楽器を手に入れる前まではヤマハ61/62の2本を計5,6年ほど使用していました。

こちらも負けず劣らずの名器でとても気に入っておりまして、今でも現場によっては現役で登場しています。60~70年代プリントロゴ期のヤマハサックスの素晴らしさについてはまたの機会に書くかも…?

蛇足ですがこちらの楽器、近年の楽器価格の高騰と海外需要で中古相場がどんどん上がっておりますので、気になっているんだよな…というサックス吹きの諸氏がもしいらっしゃいましたら目に付いたタイミングでお早めにお試しいただくことを強くオススメしますよ。


話をアメセル(※アメリカン・セルマーの略語。実際には前述のようなメーカー/ブランドは存在せず、フランスに本社を置くセルマー・パリ社の製品をアメリカにて組立を行った個体のことを指します。ちなみにこの呼称については日本発祥のようで、海外ではアメリカン・セルマーという言葉は浸透しておらず、海外ECサイトやebayなどでは"with American Engraved"「アメリカ仕様彫刻付き」や"Assembled in US"「アメリカ組立」といった表記で通用しているようですね。以上小噺。こういう細々としたことを書く段になると途端に筆が乗るわあ。)に戻しますと、実際に手に入れた2021年末の以前よりずっと所望していたわけでした。そもそも思い立ってサクッと購入できるような価格帯の代物ではありませんが…かれこれ3,4年は探していたのではないでしょうか。サックス吹きにとってはお馴染み新大久保や御茶ノ水、渋谷などの楽器店を時間を見つけては訪れ、また自宅では様々なECサイトや入荷情報を眺める毎日を過ごしていたわけです。まあこれに関しては趣味及び楽器オタクが高じているところが往々にしてあるので、とにかく手に入れるために奔走していたというわけでもないんですけどね。

そんな感じの日々を過ごしていたのですが、実際に今所有している楽器を入手したのはなんと初めて訪れたお店で、かつ在庫状況もネット等で確認して行ったわけではないという急展開でした。楽器に限らず中古で流通する品物は出会いが肝心とは凡百のエピソードとしてよく目にしますが、ふらっと初めて立ち寄ったお店で即決という、まさにその通りすぎる流れと相成ったわけです。元から様々な種類やメーカーが存在するヴィンテージ・サックスの中でもアメセル・マーク6にフォーカスして探していたわけですが、実際に購入に至るまでの条件として

・今使っている楽器(その時はヤマハ62)よりフィーリングと音色が格段に良く感じる

・楽器や奏法の慣らしの期間を必要とせず、その日に即現場で使える

・自分の思う相場からかけ離れていない現実的な価格(転売とか異常なプレ値とかあるので)

という3つを個人的に掲げており、実際に試奏をしても上記が全クリアの個体にはなかなか出会えませんでした。しかしそのすべての条件をクリアし、めでたくお迎えいたしましたのが現在のメイン楽器です。塗装剥がれや錆、修復歴とか諸々ありますけどコレクターじゃないので…。その辺の見た目も込みで気に入ってますし。


ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが(そもそもこの文章を誰が読むのか想定がついてないんですけど)、このマーク6という楽器は約20年間に渡って製造され続けた機種でありますゆえ、製造年代によって機構やデザインに僅かなマイナーチェンジが施されております。それによって音色や演奏時のフィーリングは異なってくるという非常にややこしく、また拗らせたマニアにとっては非常に愉しい性質を持ち合わせています。そのため、プレイヤーやコレクターはメーカー製造時の通し番号=シリアルナンバーをとても重視します。最初に記載しました#123599というのはそれにあたります。くれぐれもハッシュタグでなければHTMLカラーコードでもないので悪しからず。

そんなシリアルナンバーの説明をなぜわざわざ書いたかと言いますと、シリアル12万番台のマーク6というのは晩年のコルトレーン大先生が使用したとされる楽器と同じ製造年ということだからです(ただの自慢です)。ワシントンD.C.にある国立アメリカ歴史博物館には、1965年impulse!レーベルからリリースされた歴史的名盤、至上の愛のレコーディングにて使用されたとされるマーク6、#125571が収蔵されているそうです。なんとありがたや。


そんなこんなでのblog第1弾、果たしていかがなもんでしょうか……今後勢いに任せて趣味関連の駄文を書き連ねたとしても辛うじて体裁が保てるように、一発目でミュージシャンっぽい記事を書いてみたという算段でございます。とはいえ今回もうすでにオタク感は滲み出ているんですが。たまたま楽器ネタってだけで。