イグチケブカゴミムシ
Peronomerus auripilis Bates, 1883
オサムシ科
体長・9mm前後
分布・北海道、本州、四国、九州
環境省レッドカテゴリ・準絶滅危惧
全身黒っぽいが、上翅には鈍い紫の光沢がある。全身が金色の細毛で覆われており、煌びやかさはないが渋い美しさがある。胸部は真ん中辺りで、横へトゲ状に突き出す。
本種を含むヨツボシゴミムシ亜科のゴミムシ達は、いずれもかなり湿った環境を好む湿地性の面々で構成される。また、その名の通り上翅に赤ないし黄色の目立つ模様を4つ背負った種が多いが、こいつは模様を持たない。
平地の湿原や河川敷脇の湿った草むらに生息する。夜行性で、ゴミムシとしてはややおっとりした動きで草の根際を徘徊する。本種が野外にて何を餌にするのかは、誰もまともに調べておらず不明だが、他のヨツボシゴミムシ亜科の種ではナメクジやカタツムリを食う(あるいはそう思われている)種がいるため、湿地性という観点からもそうした生物を捕食しているのではないかと、私は考えている。
なお、私は本種の近縁種で類似の環境に生息するクロケブカゴミムシP. nigrinus Bates, 1873が、夜間に水田の畦で陸生のオカモノアラガイ類を捕食する様を目撃・撮影している(下の写真)。
河川改修にともなう湿地環境の破壊、夏期の川の瀬切れによる乾燥化が生息上の脅威と考えられる。その一方で、周囲に避難できる環境が少しでも残っていればそこでしのぎ、破壊された生息地が再び生息に好適な環境になった頃、戻ってくるタフさも備えているようだ。
この虫がかつて生息していた、とある西日本の河川敷は、大々的な改修工事により一度環境が根こそぎ破壊され尽くした。しかし、そのわずか2年後には川べりに草が密生して湿地環境が復活し、また本種が多数見られるようになった。手つかずのまま温存されていた、この河川の上流域に生き残っていた個体群が移動してきたものと思われる。
※引用文献
後日追加。