現代芸術3-アヴィニョンの娘たち
2023.08.25 11:24
1907年ピカソの革新的絵画「アヴィニョンの娘たち」が完成した。この女性はバルセロナの下町の娼婦である。男性が店に入ったとき「いらっしゃーい」と出てきてポーズを取るところが表現されている。これまでのピカソは社会の最下層の人々を描いてきた。ところがこの絵では逆転しているのだ。
これまでロートレックなどが描いた怠惰そうな娼婦と違い彼女達は堂々とポーズを取っている。右2人はアフリカ彫刻、中央2人はイベリア彫刻、左はエジプト美術の影響が見れる。つまり原初の生を生きている人はユートピアではなく現実に居るというのだ。
ピカソは開き直ったともいえる。上層下層、西洋人が上で黒人が下というのは社会が決めた尺度である。しかしアフリカの黒人のつくる彫刻はすばらしいと思った。人間の姿形そのものではなく、その中の生命こそ描かねばならない。その後ピカソは対象を見つめ分解し、本質的なものを組み立てていく。
この革新的絵画はこれまでの絵画とまるで違い、20世紀芸術の発火点となった。芸術家はこれまでの伝統にとらわれることなく、様々な実験を試みていくことになる。しかし当時は同じキュビズムの画家ブラックでさえ「ガソリンを飲んで火を吐いているようだ」と言ったそうで、アトリエで裏返しにされて10年間眠っていた。