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経絡治療からみた熱中症の治療と病因病理

2018.08.12 14:55
症例

☑患者 筆者。

☑現病歴 散歩から帰宅して朝食中に腹痛、悪心を発症。他には体が熱い。倦怠感。下痢。

ガイドラインによるとⅡ度に相当。

☑脉状診 やや沈、数、虚。伏脉かもしれない。

☑経絡腹診 よくわからない。

☑比較脉診 脾虚のような気がする。

※どうやら神が低下しているようだ。

☑奇経腹診 陰維脉。

☑望診 いつもより顔が赤い。

☑証決定 脉証腹証はよくわからないが病症から中焦な暑邪が中っていると診て脾虚とした。

☑適応側 天枢診にて左。

☑本治法 左陰陵泉、左曲沢に補法。陰陵泉は毫鍼で、曲沢は押し手が使えないのでてい鍼を当てる。

→腹痛、熱さ、倦怠感が消失。神がしっかりしてきた。

☑補助療法 宮脇奇経治療。左内関-右公孫に5壮-3壮で知熱灸。

→悪心が消失。

☑標治法 膻中と中脘に知熱灸3壮。

→全快。

☑止め鍼 中脘→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部の最も虚した所見に火曳きの鍼→百会の左斜め後ろ2~3ミリの順に補鍼。

熱中症の病因病理

「暑の気たる事、天に在りては、熱たり、地に在りては火たり、人の臓に在りては心たり、これを以て暑の人に中たる事、まず心につく、およそ、これに中る者は、身熱し頭痛し、煩渇して口渇く、甚だしき時は昏して人を知らず、手足微冷し、或いは吐し、或いは瀉し、或いは喘し、或いは満す。」(南北経験醫方大成)


「霍乱は、外暑熱に感じ、内飲食生冷に傷られ、たちまち心腹痛み、吐瀉、発熱、悪寒、頭痛、眩暈、煩燥し、手足冷え、脉沈にして死せんとす、転筋腹に入るものは死す。又吐せず、瀉せず、悶乱するを乾霍乱という、治しがたし。転筋は卒に吐瀉して津液乾き、脉閉じ、筋縮まり、攣(ひきつ)け、甚だしきは嚢縮り、舌巻くときは治しがたし~」(鍼灸重宝記)


外感病です。

温病です。


熱証ですから陽病です。

ただし虚熱実熱の違いがあります。

若者は陽気が盛んですから陽実証になりやすく、老人は陰液が不足してますから陰虚陽亢になりやすいです。

表裏は病症によって違います。

寒熱は熱です。

虚実も程度によって違います。


暑邪です。

暑気中りです。


衛分から侵襲した邪気が気分~営分~血分へと進みます。

表から裏へと進むほどに重症化します。


ということで分析していくと何らかの原因によって暑邪が人体に侵襲して発病します。

原因は「風邪」です。

風邪が呼び水となって暑邪を引っ張り混んできます。


台風は高気圧と低気圧の気圧の「落差」によって発生します。

人体においても落差によって台風=風邪が発生します。

仕事や目標が達成されるとホッとします。緊張と緩和による落差です。

一喜一憂も感情の落差です。

休みの日になるとだらけます。生活リズムの落差です。

これら落差の開きが大きくなると高気圧と低気圧がぶつかり合って台風を生じるように、緊張(陰)と緩和(陽)の落差によって風邪が生じます。


太陽中風証で自汗するように、風邪は腠理を開きます。

文字通り内側から風穴を開けます。

どこからともなくすきま風が入ってくるようなものです。

通常は衛気が体表に分布して外邪から身を守ってくれてますが、体内で風邪が発生すると腠理を開き表に風穴を開け四時の邪を呼び込みます。

冬場なら寒邪、夏場なら暑邪です。


風邪がなければ暑邪を引っ張り混んできません。

落差がなければその風邪は発生しません。

正に「内傷なければ外邪入らず」です。

熱中症の経絡治療

脾を中心に考えます。

運化、昇清、統血。

運化がままならないので消化器の病症が出現します。

昇清がままならないので意識傷害が起こります。

血を統べることがままならないので手足が冷え痙攣します。


  1. 爪を押さえる。色が戻らなければ重症。
  2. 伏脉は順、浮いて強い脉は逆証。

※医療搬送は常に視野にいれておく。


番茶に塩を入れて飲まし、涼しいところで一服させる。


  1. 脾虚で太白、大陵を補います。
  2. 顔が赤ければ陰陵泉、曲沢を補います。
  3. 時々腎虚があります。


奇経治療。

  1. 陰維脉
  2. 衝脉


  1. 膻中と中脘に知熱灸。
  2. 第7-8胸椎棘突起間の右脊際に円皮鍼。


  1. 日々適度な緊張感をもって、一喜一憂せず、落差をなくす。
  2. 梅干しを常食する。
  3. 梅干しが苦手な幼児は番茶に塩を入れて飲ます。

最後にくれぐれも患者ファースト、人命第一で当たってください。