認知と過敏性腸症候群(IBS)
不安と過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群(IBS)の症状そのものを改善させるための治療として消化器内科を受診した場合に勧められることが多いのは薬物療法になります。
ただし、これはIBSの根本的な原因から治療するというよりは、主に痛みや下痢、便秘、腹部膨満感といった症状に対する治療(対症療法)となります。
これは感染症のように『このばい菌が原因』というような、明らかな原因がわからないもしくはわかりにくい病気に対する治療法としては比較的よく行われている方法です。
つまり、これといった特効薬があるというわけではなく、症状に応じては複数の治療薬を使用することもあります。
しかし、これらの薬剤が十分な効果を発揮しないとき、認知行動療法を含めた心理療法が効果を発揮することがあります。
心理療法が効果を発揮する背景には、脳腸相関の項目でも触れましたが、感情の中でもとりわけ不安が関与していると考えられています。
下痢や腹痛を伴う便秘、腹満感などの腹部症状に対する不安が増長されることで腹部へ注意が過度に向きがちになり、腸の知覚過敏や腸管運動の異常につながると考えられています。
認知行動療法ではこの不安を増強する考えや行動を見つけ、それを変化させることで症状の改善を図っていくことを目指しています。
考えはどの程度感情に影響を当たるのか?
例えばこんな場面であなたはどんな気持ちになるでしょうか?
”知り合いが通りの向こうを歩いていたことに気付いたあなたは会釈をしました。しかし、相手からは何の返事もないまますれ違ってしまいました。”
①悲しみ
②不安
③怒り
④その他
①悲しみを感じた人は自分は嫌われていると考えて悲しくなったのかもしれません。
②不安と感じた人は自分が相手を怒らせるようなことをしてしまったと考えたのかもしれません。
③怒りを感じた人は相手が失礼だと考得たのかもしれません。
④相手が気付かなかっただけかもしれないから、とあまり何とも思わないという人もいらっしゃいます。
また、どんな「知り合い」を想像したかによっても感じた感情は変わってくると思います。
私たちは膨大な考えを常に巡らせていると言われています。
そんな中で浮かぶ全ての思考に一つ一つ対応していては、身動きが取れなくなってしまうため、殆どの思考が無意識のうちに半自動的に処理されていると考えられ、認知行動療法においては自動思考と呼ばれます。
通常、自動思考は日常生活を問題なく送るために、個人個人の状況に一番合った形で処理されています。
しかし、過敏性腸症候群(IBS)などの強い負荷がかかると、不安などを悪化させる考え方に偏りがちになると言われています。
また、特定の行動はこの考えを強め、肯定する働きをすることも知られています。
このため、ストレス(特に不安)につながる考え方や行動を見つけ、それを変更することで少しずつ症状や感情の改善を図っていくのが過敏性腸症候群(IBS)に対する認知行動療法となります。
自分の考え方の癖を見つけ、修正することに少しでもご興味がある方はぜひ、中央事務局までご連絡ください。
2020年3月18日 修正
素材
写真 写真AC クリエイター:はむぱんさん
写真 写真AC クリエイター:七彩さん